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呪い・祟り

yukiさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

僕はこれから『呪われた撮影現場』を実況することになる
長編 2025/05/16 15:36 12,634view
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テレビ局のバスは、町外れの林に差し掛かる。
深い緑の木々から空に向けて三角系の屋根が禍々しく聳えている、三本の特徴的な尖塔が見えてきた。
もうすぐ、例の屋敷だ。
林を抜け、屋敷の門に到着した。
撮影スタッフと役者が、バスから降りる。
季節は初夏。太陽の光もあるはずなのに、館の周囲はジメジメとしており、不快な汗がステップに足をかける僕の背中を伝い落ちた。
堅甲な造りであった筈の門の鍵はかかっておらず、それどころか観音開きの扉の片側はすでに朽ちて無くなっていた。
僕達は役割を失い朽ちた門を超え、屋敷の敷地内に足を踏み入れる。
そこには、手入れもされず荒れ果てた庭が広がっている。黒緑色の雑草が鬱蒼と生い茂り、雑草の中には毒々しい色をした赤と白の花が点々と生えている。

街中では感じることの無い、ムッとする草の匂いに僕は顔をしかめた。
庭を抜け、屋敷の入り口に辿り着く。立派な門構えの玄関が僕に目に飛び込んできた。
僕はなんとなく玄関のドアに触れる。ドアノブは酷く冷たく触るものを拒むようだ。力を込めてみるが、玄関には鍵がかかっていた。
玄関から少し離れ、館の外観を観察する。
かつては温かみのある雰囲気であったろう、煉瓦造りの壁は、今では赤黒く変質し、苔で滑った気持ち悪い光沢を放っていた。
窓は煤と埃で汚れ、中の様子は見えない。
白い女性が見えると言われる二回の窓を眺める。その窓も長年の雨風で汚れ黒く染まり、中を伺い見ることはできなかった。

玄関の前にスタッフと役者が揃った。
小太りの男性が、メガホンを手に取り、機材の設置場所を支持している。

彼が、この撮影の監督のようだ。
撮影スタッフは、皆、監督の顔見知りのようで、指示に通りにテキパキと動いている。
監督の命令で細かな指示を送る助監督さん。
屋敷の周囲を確認している年配の女性スタッフ。
テントを設置しメイク道具を並べる若手の女性スタッフ。
皆に混じらず、端のほうで大小の道具を組み立てている、先ほど僕らの話に口を挟んできた道具係さん。
若い茶髪の女優、ミキさん。
僕の隣にいる、主演のカトウさんとマナミさん。
そして、雑用&モブキャラを演じる、バイトの僕。
他にも、照明係や音響係、カメラマンなどの関係者多数。
このメンバーで、モキュメンタリードラマ『括リ姫~呪われた撮影~』の作成が行われる。

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