そんな悦楽の日々は、ある日突然幕を閉じた。
いや、幕を開けたのだ。
そう。恐怖の幕を…。
ある夏の日の夜、Aが待ち合わせの時間に遅れてやってきた。
遅れてきたAは、その綺麗な顔の左頬を紅く腫れ上がらせていた。
大した腫れではなかった。だがAの色白の肌に、その疵はまるで異物を顔に貼り付けているように目立つ。
Aのその姿を見て、Bは、
「どうしたんだ、その傷! 誰がやりやがった!」
と、興奮してAを問い詰める。
Aは、少し躊躇った後、
「…うちのバカ親よ。夜遊びを咎められて、お父様に殴られたの。」
と答える。
「殺してやるよ! そんなジジイ!」
いきりたつBを、さすがに他人の親に暴力はまずいだろう、と俺はなだめる。
そして、せめてばれないようにやろうぜ、と暴力反対主義の俺は提案すした。
しかし、その提案を聞いたAは、
「殺さなくたっていいわよ。代わりに、家中の調度品とか家具とか、片っ端から壊してきたから。ついでに、お母様の腕をゴルフクラブで叩き折ってきた。しばらくは追ってこないと思うしね。」
と、さらりと述べる。
おいおいそんなことして大丈夫か、と問う俺。
「うちのバカ親は、世間体しか気にしない最低の奴らよ。外面ばっかり良くって、今まで『娘は素晴らしい子ですのよ』って言い続けてきてたから。今更、私の素行を世間にバラすような事はしないわ。」
さすがはAだ。狂っている。
Bも、Aのその言葉を聞き、怒りを納めたようだ。
しかし。その時の俺の中に、ふと苛立ちがつのる。
…この町も、大人も、馬鹿ばかりだ。
「ねえ、気分転換に、何か面白い事、ないかなぁ。」
そのAの提案に、俺は答える。
禁足地に行ってみないか、と。
俺は、以前から気になっていた丘の森の探検を持ちかけた。
「いいじゃない。肝試し。気分転換にはうってつけね。」
「おう。行こうじゃないか。」
Bも俺の提案に乗り気になり、俺たち三人は、森に向かう。
























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