「いや、さっき黒い雨合羽を着た男が出口のところに立っていたように見えたんだけど……」
彼女は何度となく目を凝らしている。
だが再びいつもの顔に戻ると、
「ごめん。見間違いみたい」
と言って、また歩きだした。
※※※※※※※※※※
結局トンネル内ではこれということも起こらず、二人は出口のところまで辿り着いた。
梅雨時の天気は移ろいやすい。
外ではいつの間にか、雨が止んでいる。
「じゃあ、この先の滝まで行ってみるか」
そう言うと、是枝は懐中電灯を片手にさっさと歩きだした。
絢子も嫌々ながらあとに従う。
情報によると、そこで嘗て女性二人が殺害されたということだ。
滝はトンネルから伸びる道の僅か数十メートルのところにある右手の曲がり角から入ったところにあるらしい。
「おや?」
是枝は曲がり角の山肌の傾斜地に地蔵があるのに気づいた。
彼はそこに懐中電灯を照らしてみる。
まるでひな壇のひな人形のように、数十体が不気味に並んでいる。
そのすべてが、赤い涎掛けをしていた。
彼は地蔵たちの正面に立ってみる。
「こんなところに、どうしてこんなにたくさん……」
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今後のご活躍を楽しみにしています
怖話の頃からの読者の方ですね
わざわざ来ていただき、ありがとうございます
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今後もあげていく予定ですので、また時間のある時とかに読んでいただくと、光栄です
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めっちゃ怖くて面白い
怖がってもらえ、光栄です
─ねこじろう