神隠し？

結局制限時間の10分間、ほぼずっとその子と密着したままだった。

「制限時間です！○○くん(俺)と××ちゃん(好きな子)が残りました～！」
「ではホールに集合してください！」
と先生が放送で伝える。

じゃあ出ようか、と言って棚を開ける。
手を貸そうと棚の方に少し照れながら手を差し伸べた。

恥ずかしくて目を逸らしていたんだが、一向に手を掴まれない。
うわ、引いちゃったかなと棚の中を見ると、彼女がいない。

あれ？目逸らしてる隙にどっかに行ったのかな・・・？
でも、扉を開けた音も聞こえなかったし、棚の中をくまなく探すがいない。

おかしいな、と思いつつ集合場所に向かうが、彼女は戻っていなかった。

そこから、父兄が総出で捜索を開始した。
子供たちは一室に集められた。

トトロだったかもののけ姫だったか、映画を見せられたような覚えがある。
俺は最初にさっきまで一緒にいたことを伝えていたから、事情を聴くために一人呼ばれた。

担任、教頭、PTA会長である彼女の父と俺の両親がいて、色々と事情を聴かれた。

俺は何も後ろめたいこともないから、音楽室の棚に一緒に隠れてた、と伝えた。
6人で音楽室に行き、棚を確認するが誰もいない。
ただ一つ、彼女のハンカチが落ちていた。
棚の扉は一つしかないし、出られそうな穴もなければ隙間もない。

でも放送が鳴るまで一緒にいた。
棚から出て、手を差し伸べたころにはいなくなっていた。
棚の中で暗いとは言えども、隣にいたことは分かっていたし、
鬼が来ない間はずっとしゃべっていた。

それを伝えても、教頭や両親からは嘘言ってるんじゃないか、と少し怒られた。
本当のことしか言ってないよ、と伝えると、彼女の父が青ざめた顔をしていた。

どうかしましたかと担任が聞くと、「ちょっと話しましょう」と空き教室に向かった。

「前にもあったんです…こういう事件…」
と言うと、ポツリ、ポツリと語り出した。