神隠し？

昔、彼女の父はこの学校に通っていたらしい。
いたずら好きのある男子と、音楽の先生を驚かすために準備室の棚に隠れたらしい。
ただ驚かすだけじゃ面白くない。
てことで、最初に彼女の父が飛び出す、その後その男子が飛び出し驚かすという2段構え。

彼女の父が先に先生を驚かした。
当時可愛いと男子から評判だった先生の驚く顔を見てたいそう爆笑したらしい。
さあ次！と棚に視線を向けるが、一向に出てこない。

待てど暮らせど、出てこない。
結局先生が準備室から出てしまった。

不審に思った彼女の父が棚を開けると、彼が来ていたタンクトップ一つ残して消えていたらしい。
彼は未だに、見つかっていない。

俺たちは、その話を聞いて背筋が凍った。
つまり、彼女はもうどこかへ消えたのか？
俺は不安になって、泣き出してしまった。

結局、彼女は今も行方不明。
学校に責任があることを恐れた校長は、学校お泊りイベントをなかったことにして、その日は帰された。

もし彼女が先に棚から出ていたら、俺が消えていたのだろうか。
もしあそこに隠れていなければ、彼女は今も元気に暮らしていただろうか。

彼女の父は、事件後すぐに自殺してしまった。
最愛の娘のハンカチを握りしめたまま、練炭で死んでいたらしい。

そして閉校した今、小学校に行ってみることにした。
既に不良のたまり場のようになっていて、スプレーで「〇〇参上！」とか書いてある。

ガラスも割られていたため、容易に入ることができた。

音楽室へ行くと、音楽家の絵画や楽器などはなかったが、
棚はまだ残っていた。

扉を開けると、当時の思い出がフラッシュバックする。
相変わらず、空っぽのままだった。