【当館の全室に設置された「合わせ鏡」は、安全上の理由により、
ご自身で位置を変えないようお願いしております。】
何が“安全”なのかは、説明されていなかった。
外に出たとき、雲の切れ間から日が差していた。
少しほっとして、スマホで今日のスケジュールを確認しようとした。
画面に映ったのは、自撮りモードのままのカメラ。
こちらを映すレンズの奥に、微かに何かが動いた。
――自分の顔だった。
けれど、目が、黒く塗りつぶされていた。
そして唇が、声もなくこう動いた。
「おかえり」
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