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ヒトコワ

小夏さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

子どもの頃、お母さんに捨てられそうになった話。
長編 2025/04/05 01:24 7,555view
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母は、「もうお母さん無理、もう限界」と言って、「産むんじゃなかった!!」と叫んだ。

薄々気が付いてた。
母は、父のことが大好きだったけれど、わたしのことはそれほど好きではないこと。
のちに(中学生になってから)聞いた話だが、わたしを身ごもったことは、計画的な出来事ではなかった。
それでも、しっかりと子どもに対して愛情を持ち、ちゃんと親になる人も大勢いるだろう。
わたしの母も離婚前までは、そうだったと思う。

でも、父と別れてから、恐らく父に対しては憎しみを抱き、顔も性格も父親似のわたしが手に負えないわがままを言う子どもになり、我慢の限界だったのだと思う。

母は、自分のシートベルトを外してから、わたしのシートベルトも外し、身を乗り出して助手席のドアを開けて、わたしを突き飛ばすようにして車の外に放り出した。

勢いよく車から投げ出されたわたしは、左ひじを地面に強打して、痛みと悲しさで心が破裂しそうだった。

我を忘れて、「お母さんごめんなさいごめんなさい」と叫び、今までわがままを言って母を困られたことを心の底から謝った。

母は、開け放した助手席のドアを閉めることもせずに、車をUターンさせて行ってしまった。

早朝の海(ビーチ?)の小さな駐車場、人気はなく、遠くにホテルだかアパートっぽい建物が見える以外は何もない場所で、4時間近く放置された。

当時から、内弁慶でプライドの高い子どもだったのだが、もう、誰に見られても、聞かれてもどうでもよくなり、しばらく泣き叫んでいた。
でも、結局誰にも見つからなかった。

1時間もすれば泣きつかれて声は出なくなるけれど、父もいない、母にも捨てられたと思い、人生で初めて心の底から絶望した。

そのころから、わたしは壊れてしまったように思う。

結局、約4時間後に母は戻ってきてくれた。

わたしは、投げ出されたままの状態で、駐車場でずっと倒れていて、悲しさと惨めさで起き上がる気力がなかった。

母は、一言も発さずにわたたしの腕を掴んで、引っ張り起こし、ゴミでも見るかのような目でわたしを見たあとに車の助手席を見てた。
母の目が、車に乗れと言っていると理解したわたしは、悔しさでいっぱいの気持ちを抑えて車に乗った。

あんなに、戻ってきて欲しいと思っていたのに、いざ、憎しみでいっぱいの目で戻ってこられると、悲しかったり不安だったはずの気持ちは、怒りに変わった。

母が戻ってきてくれた安心感がなかったわけではないけれど、いつか、わたしが同じようにお前を捨ててやるというような復讐心も生まれた。

それから、普通に来た道を戻って、家に着き、次の日からは普通の生活に戻った。

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