高校を卒業して、県外の大学へ進学するまで、ふたりで一応は平穏無事に暮らしたのだが、あの日以来、わたしは、心の奥底で母のことを許せずにいる。
母がしたことは、教育だったのか___
確かに、わたしは、心の底から反省し、癇癪を起すことはなくなった。
でもそれは、母のことが分からなくなったからだった。怖くなったからだった。
この人は、何をするか分からない。
そんな気持ちがずっとあって、わたしと母は、根本的には分かり合えなかった。
大学に合格し、家を出るときに思ったことは、もう、戻ることはないだろうということだった。
母も仕事に慣れてからは、また以前のように、美味しいごはんを作ってくれるようになり、きちんと栄養のある食事を提供してくれた。学校関係の支払いとか、月のお小遣いも、苦しい家計状況の中、やりくりしてくれた。
文字通り、ちゃんと育ててもらった。
それは、本当に感謝しているし、母を尊敬している。
女手一つで、決して楽ではなかったはず。
それ以上を望むのは、もしかしたらおこがましいのかもしれない。
でも、何だろう、それだけだった。
思春期の頃に、学校で揶揄(からか)われるくらいにニキビが酷かったのに、病院へ連れて行ってもらえなかった。
身体が成長し、下着が必要なのに、中々買ってくれなかった。
社会に出る上で聞いておきたかった世の中の仕組みを何も教えてもらわなかった。
母は、わたしのことを本当の意味で愛しているのか未だに分からない。
幼い頃に、「産まなきゃよかった」と存在を否定された経験は、わたしの心に深い傷を残し、情けなくも今もその傷に苦しめられる。
捨てられそうにはなったけど、捨てないで育ててくれてありがとう。
























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