今日はあいつが新しいメンツを紹介してくれるそうだ」
すると福島という担任の男が一つ咳払いをし喋りだした。
「今年また皆さんのお顔を拝見でき、たいへん喜ばしく思います。
ええ、今日は皆さんに新しい仲間をご紹介します。
成績優秀スポーツ万能でクラス委員長だった早瀬くんです!」
パラパラという拍手とどよめきのあと、舞台の袖から一人の男が現れた。
とたんに会場はシンと静まり返る。
さとるは男の姿を見たとたん、また背筋が凍りつく。
男には片腕がなく変な風にねじ曲がった足を引きずりながら、まるで天井からピアノ線で操られる人形のようにカクカクとぎこちなく歩き進む。
しかも頭の片側が削り取られたように消失しており、中身の脳ミソが剥き出しになっていた。
早瀬という男は何とか担任の福島のところまでたどり着く。
改めて会場から疎らな拍手が起こった。
福島は早瀬の背中に手を当てると満面に笑みを浮かべながら、また喋りだした。
「早瀬くんは○○小学校を卒業し名門の私立高校に進んだ後はT大学の法学部に進学します。
そして上級公務員試験に合格しました。
それから国の各機関を転々として最後は中央省庁に入省します。
素敵な奥様と利発な息子さんにも恵まれ順風満帆だった人生を歩んでいた早瀬くんだったのですが、
20年以上前のとある日の朝の通勤時、どういった事情からか駅のホームから線路に落下し通過列車に跳ねられ冥界に召されました。
それから長らく闇の世界で一人うずくまっていたのですが、本日はこの会に出席してくれたのです」
それから福島は、
右目の眼球が半分飛び出した早瀬の顔に顔を近付けるとさらに続ける。
「早瀬くん安心しなさい。
今日からきみは一人じゃないんです。
ほら正面をご覧なさい、昔の仲間がいるでしょう?」
早瀬という男は感極まったのか、その場でガックリ跪くと赤子のように泣きわめきだした。
テーブルに座った者たちが彼に暖かい拍手を送っている中、
葉山という女だけは早瀬を指さしながらさもおかしそうにケタケタ笑っていた。
この辺りからいよいよ頭は混乱の渦に巻き込まれ、さとるはそのまま意識を失う。
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なぜ草なんだろう?
草葉の陰からという言葉にもあるように、
草というのは、冥界をさす言葉でもあるようです。
─ねこじろう