ちょうだい

金縛りに合わなくなり2、3ヶ月が経ったある日、父は金縛りになった。
またか。と思ったらしいがどうやら以前とは少し違う感じがしたらしい。
いつも以上に身体が動かず、瞼も開けれない…
そんなことを考えていると、何かが近づいてきた気配を感じたという。
父は、また腕かと思い時間が過ぎるまで我慢していると…

プチッ
髪の毛を抜かれる感触があった。
やっぱりかと思っていると、

ブチッ！！
ブチッブチッブチチチチチチ！！

と髪の毛を両手で鷲掴みにし、一気に抜かれる感触があり身体全身に衝撃が走ったそうだ。
頭を抑えたいけど身体が動かない…
あまりの痛さ、恐怖に叫びたいが声が出ない…
すると何かが微かに聞こえてきた。

ち、ちょう……
ちょうだ…
ちょう…
ちょうだい…

女性の声が僅かに聞こえる…
妻の声ではない、他の女性の声。

突然の出来事で父は何が起きているのかわからなくなったという。
その後、また髪の毛を鷲掴みにされ

ブチチチチッ！ブチッ…

とまた一気に抜かれた感じがしたがどうすることも出来ず、ただひたすらに我慢していた。

ちがう…
私の髪じゃない…
私のキレイな髪…

と耳元で声がした瞬間、父は気を失った…

翌朝、目を覚まし昨夜のことを確認するべく鏡を見ると髪の毛に変わりがなく一安心したという…
よかった…しかし、一息つき何気なく頭を触ると血が手についたのを見て再び恐怖を感じたという。
それっきり、金縛りに合うことは激減したそうだ。