捜索

「チガウ…チガウ…ワタシノカラダジャナイ…」

という声がどこからともなく聞こえ、ふと視線の向けた先には無数の手の奥に女性の顔が出ているのが見えて私は気絶した。
目が覚めた頃には顔も手も全て消えていたので、「やっぱり夢だったのか？」と思ったが右頬には微かにキズの跡が残っており、その後しばらく鏡の前で立ち尽くしていた。

その後、金縛りも手を見ることもなくなり普通の生活を送れるようになってきたが、事情を知っている友人達や家族からの強い要望により、寮を出ることにした。

引っ越し先も決まり、片付けも順調にいってる中、友人から
「そういえばさ、天井裏は見たことあるの？」
と聞かれた。
「天井裏は見たことないな…特に用事もないし…」
「せっかくだし、覗いてみるか？大丈夫！今は昼間だし、何かあっても俺らいるから。」
気の乗らない提案に渋々了承し調べてみることにした。

押入れの中身を全て出し、天井の一角を開けて天井裏へ顔を出した。
「は？…………なにこれ………」
埃だらけの中、何かが通った形跡が残っていた。更にゴミかわからないが破れた衣服の一部とシミ？のようなものが残っていた。
腕を伸ばし、シミの一部を触って確認すると赤黒いものが確認でき、
「サビ？いや……血？」
「どうした？大丈夫か？」
友人の声が聞こえたので状況を説明し、一応、寮を管理している不動産屋に連絡することに。
不動産屋に今までの経緯を説明し、血かどうか後日警察と調べることになったそうだ。

引っ越しを終え、しばらく経ったある日。
寮に住んでいる会社の同僚から連絡があり、数人で集まることに。

「どうした？いきなり飲み会なんて珍しいな。」
「いや、飲み会もいいんだけどさ。ほら、お前がいた部屋。その後のこと気にならないか？」
「えっ？何か進展あったの？」
「ああ。あの後、何日かして警察や不動産屋が部屋の確認に来てさ。例の屋根裏も調べてたんだよ。そしたら、だいぶ前の血痕の跡だったみたい。」
「えっ？マジかよ。やっぱり、あれ血だったんだ。」
天井裏とはいえ、血痕のある部屋に住んでいたと考えると気分が悪くなってきた。

「不動産屋とその後話をしたんだけどさ、警察が鑑識を終えてから連絡きたらしい。あの部屋に住んでいた人を教えてほしいって。」
「え？殺人ってこと？」と尋ねると友人は小さく頷いた。
「犯人はすぐに捕まったみたい。当時付き合っていた女性とトラブルにあり、カッとなって殺害してしまったと。殺害された女性は身体をバラバラにされたんだって。」

あの手は自分の体のパーツを探していたのかもしれない。