「ハイ・・・」
ボクはどうしようもないので、その場にへたり込んで待つことにした。
ボクがまだ若かりし頃、当時付き合いはじめたばかりのヨメが、初めて家に上げてくれると言うその時に「ちょっと片付けるから少し待ってて」なんて言われてドアの前で待っていたことがあったが・・・どうやら事態はそんな甘酸っぱいものではなかったらしい。
しばらくすると大きな黒いクルマが我が家の前に止まった。
そして中からこれまた大きな体の黒ずくめに丸いサングラスの男が現れた。
「たのも~~~。こちらにお困りの方がおられると聞き、参上いたしました~~!」
変な奴がやって来た。
彼がこちらに挨拶してきたので、こちらも挨拶をして門の前まで駆け寄る。
「あの・・・あなた、どちら様でしょうか?」
「私こういうものです」
そう言うと彼は名刺を一枚差し出した。
そこには『除霊師・忍足 忍』(オシダリ シノブ)と書かれていた。
「あなたがここの旦那さんですね? 私、オシダリシノブと申します。忍の字が二つありますので、皆さんからはニンニンと呼ばれております! あははは、なんつってw」
(・・・変なヤツだ・・・) (-_-)
「実は先ほど奥様から電話を頂きまして、急遽はせ参じました」
旦那? 奥様? ・・・人違いじゃないだろうか・・・と思ったが、彼は間髪入れずにしゃべり始めた。
「あぁ、旦那さん、確かに憑りつかれてますね。見えますか? 見えませんね?
じゃあ一枚写真撮りますよ」
「えっ、あぁ、あの、なんですか?」
こっちがうろたえている間にスマホで写真を数枚パシャパシャ撮られた。
「いやちょっと、やめてください! なんなんですかあなた!?」
そう抗議するボクに、彼がスマホ画面をぐいっと見せつける。
「ホラ、これ・・・うっすらですが、見えますよね」
そこには、あの海で見た亡霊が確かに写り込んでいた。
まるでボクに寄り添うようにくっついている。
唖然としているボクに「じゃ、さっそく除霊はじめますね~」と気軽に言って、なにかの準備を始めるニンニン除霊師・・・。
「奥様からは家の外で除霊を済ませてと依頼されてますので、ここで失礼しますね」
除霊師は車から神主さんがよく持っている「はらえぐし」を取り出し、ロウソクや線香なども設置して30分くらいかけて儀式を執り行った。
家の前に立ち止まってそれを見ていく人たちもいて、こっちとしては恥ずかしい限りなのだが、あの写真を見せられては、だまっているしかない。
やがて、しばらくするとなぜか『スッキリ』とした感覚になり、体がふっと軽くなった。除霊が成功したのだろうか・・・。
kanaです。
この作品は2022年の春頃に書いたマリーさんシリーズの4編をまとめて、加筆修正してまとめた完全版として書き上げたものです。長編18ページとなりましたが、面白く読めると思いますので、ぜひお読みください。後半に出てくるニンニンこと、除霊師・忍足 忍(オシダリ シノブ)は、朽屋瑠子シリーズの「赤騎士事件」にも朽屋の同僚として登場する除霊師です。スピンオフ参加です。お楽しみください。
読んでいる途中で感情移入をしたようで、涙が止まりませんでした。
良い話や
すごい感動しました👏
最高です!
※勲章授与のシーンで脱字がありましたので修正しました。
kanaです。
劇中歌として『ホームにて』と『時はながれて』をマリーさんが歌っていますので、
よろしければそれを聞きながら読んでいただくと、臨場感も湧くと思います。
ちなみに、検索をかけると『時はながれて』と同名のタイトルの楽曲を複数の方が歌われているようで、もしかしたら違う曲を聴く可能性もありますが(笑)、マリーさんが歌っているのはあくまでも「某有名女性フォークシンガー」が歌われている曲です。失恋の歌が多い方ですよね。
では、お楽しみください。
↑↑感動したというコメントをいただいて大変ありがたいです。あと、怖くないのにこわいねボタン押してくださる方、ありがとうございます。
みなさんはどのシーンでほろりと来ましたか?
怖いの苦手な方も、ぜひお楽しみください。
さすがです。
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