俺は「行くな」と言いながらその背中を追った。
だが不思議なことに、どんなに全力で駆けても、弟に追い付けない。
やがて弟はじいちゃんの傍らに行ってしまった。
そして彼らは蜃気楼のようにユラユラ揺れながら霞んでいくと、最後はふっと消える。
喪失感に苛まれた俺はがっくりその場に跪き、ただ呆然としながらその場に佇んでいた。
━ ━ ━ ━ ━
そこで目が覚める。
額にじっとりとした汗を感じる。
心臓が早鐘のように激しく脈打っていた。
ふと横を見ると、弟がいない。
━トイレかな?
などと思いながら再び眠りについた。
━ ━ ━ ━ ━
それから弟の姿がないのに家族が気付いたのは翌朝、両親が仕事に出ていく直前だった。
すぐに家族総動員で家捜ししたが、結局見つからなかった。
ただ納屋の中を探した時、奥にあった電話を納めた桐の箱が開けられていて、中の電話が受話器の外された状態で床に置かれていたのが見つかった。
その後警察や地元の消防団ら数十人も加わり、弟の捜索が行われる。
そしてやはりというか約2ヶ月が経った頃、弟は変わり果てた姿で見つかった。
父は弟の葬式の後すぐに、あの電話機を知り合いのお寺に持っていく。
俺は高校を卒業すると家業は継がず、東京のとある会社に就職した。
そして今は、
同じ職場で知り合った洋子とアパートで同棲している。
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怖い…
怖がっていただき、光栄です
━ねこじろう
ちびりそう
一見、アンティーク電話が怖いようですが
ここまで主人公の周りで人が死ぬというのは、本当は…?