自分は1人だった
投稿者:八尺マン (49)
長編
2025/01/28
23:20
4,064view
俺はそのもう1人を見た瞬間、店から飛び出した
まさか
そんなまさか
こんなの何かの間違いだ
こんなことあっていいはずがない
そう思いながら、しかし、これまで何回か感じていた違和感の一つ一つが思い浮かんでいく
何故、俺は昼まで玄関で放置されていたか
何故、その男は俺ともう1人以外には見えなかったのか
次々浮かぶこれまでの異常に、俺は違う違うと言い続けた
やがて、家についた
俺は愛する家族の
妻の名前を言おうとした
だが、言えなかった
走ってきて息が上がっていたからではない
思い出せなかった
妻の名前を
名前だけじゃない
彼女とこれまでどう過ごしてきたか思い出せない
ずっと連れ添ってきたと思っていたが、しかし、断片的にすら思い出せない
唯一顔だけは思い出せる
何故ならさっき見たから
失踪したもう一人
それが俺の妻だったはずの女性だった
気付いてしまった
俺に妻なんて最初からいなかったのだ
俺の友人と思っていたやつが失踪して死んでしまった別人だったように
俺の妻と思っていたやつは同じく失踪していた別人だった
俺はずっと孤独だった
その孤独に慣れたつもりだった
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 24票
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。