嘘

「みんな怖がるから言わなかったんだけど…ここの海、出るらしいよ。会社の先輩にキャンプするって話して場所を言ったらマジな顔になってさ、どうしたんですか？って聞いたら教えてくれたんだ。」
友人達は、
「またまたー！」
「うそだろ！聞いたことないし。」
と初めは信じなかった。しかし、この反応は予想通り。
「まぁ、嘘だと思うならそう思って聞いてていいよ。他の海水浴場と比べてここの海は人が少ないと思わない？
もう、9月になったから海水浴に来る人は少ないけど、去年の8月に来た時のこと思い出してみて。人、多かったか？この辺の人はこの海水浴場を利用しないらしい。みんな知ってるから。」と話した。

すると、
「本当かよ？」
「でも、確かに他の場所に比べると利用してる人少ないかも…」
徐々に信じ始めてきた感じがした。
「だろ？地元の人はあまり海に近づかないんだよ。特に夜は。」
みんな黙りながら耳を傾けている。

作り話とはいえ、結構食いついてくれたことに嬉しかったのか悪い気はしなかった。
「なんで、キャンプの場所決めの時に言わなかったんだよー？」
「ここで何があったんだよ？」

私は横になり、話を続けた。
「俺も知らなかったんだよ。後から聞いた話だから。もう、怪談話やめて寝ない？」
と言って話を終わらせようとした。
「ここまで話して、やめんの？」
「会社の先輩から聞いたんだろ？教えてよ！」
この反応も予想通り。
自分の思い描いた通りにことが進んで面白かった。
「いいんだな？聞くんだな？」と3人の方を向き伝えた。全員、静かに頷いたので話を続けた。

「結構前にこの海で女性が亡くなったらしい。海でというか、川から流されたみたいなんだ。ここの川、海に繋がってるだろ？溺れて流されたんだって。
大雨が降った翌日に友人達と川の様子を見に行ったら誤って川に落ちてしまってそのまま海まで流されて亡くなったらしい。」

私は続けて、
「その事故があってから海に繋がる川の周辺を整備したりして同じ事故が起きないようにしてるんだ。だけど、女性が亡くなってから目撃情報や女性の声を聞いたという噂が一気に増えたらしい。
なんでも、「どうしてワタシだけ…なんでタスケテくれなかったの？」っていう声が聞こえてくるんだって。」
友人達は、何も言わず黙って聞いていた。
「波打ち際を歩く音がバシャ、バシャと聞こえてから砂浜を歩く音がザッザッとして徐々に近づいてくるって。そのあとは…まぁ、いいか！ここまでにしよう」
「なんでだよ！」
「その後のことが気になる…」
と言って少しはビビっている様子だった。
「まぁ、俺たちは霊感ないし、見ることも聞くこともないだろう？大丈夫だよ！」と私は言った。
「そうだな。俺らは大丈夫か！」
「霊感ないしな！」
とまるで自分自身に言い聞かせるように話始めた。
「だろ？大丈夫だよ。そろそろ寝ようぜ。さすがに疲れたわ。あいつら朝に来るぞ。それまで寝てたら何言われるかわからん。」
と私が言い就寝することにした。