ドアを隔てた隣の電車にいるその短髪でスーツ姿の男性は、
もう10年以上も会っていないとはいえ、間違いなく、
高校時代の友達、あの西園寺!
気づくと西園寺はすぐに笑顔を浮かべ、こちらと同様にスマホの画面を見せた。
『佐楢美?』
混み合った車輌内で思わず笑い声を上げてしまったけれど、そこでどちらも発進の時間。
乗降側のドアも閉まって、電車が動き出す。
そこで西園寺がまたスマホに文字を打ち込んで、ドア越しでこちらへ見せたのは、
『フェイスブックで検索して!』
帰宅してすぐPCを開いてフェイスブックの窓で彼のフルネーム(仮に)「西園寺 太郎」を検索すると、
すぐに、福岡出身で出身高校も同じ、同年代の、つまり僕の友達の西園寺ご本人と連絡がついた。
その夜のうちにLINEを交換して、すぐに通話してみる。
「お前も東京で暮らしてたなんて知らなかったよ」と問いかけると、
西園寺はこう応えた。
「なんば言いよっと?
今も天神で働きよぅし、東京なんて行っちょらんばい?」
話が見えない。
となると、もし「友達の西園寺」の言うことが本当ならば、
「電車の西園寺」は西園寺の別人ということになる。
であるにも関わらず、ただでさえ珍しい西園寺という姓の人間が、
「友達の西園寺」と瓜二つの状態で、なおかつ
僕という『佐楢美(さなみ)』というこれも非常に珍しい姓と鉢合わせをして、
さらに(ちょっと複雑になるけれどあと少し我慢して欲しい)、
さらに、「電車の西園寺」は「僕という佐楢美」によく似た「僕じゃない佐楢美」と
”互いに呼び捨てに出来る程度には親しい”関係性であると推測できる。
「電車の西園寺」と「僕じゃない佐楢美」はおそらく友人関係であり、
「友達の西園寺」と「僕という佐楢美」もまた同様に友人関係であり、
駅のホームで出会ったのは
「電車の西園寺」と「僕という佐楢美」という、お互いが友人として相手を見間違うほど非常によく似た、
まったくの他人であった、ということになる。
























ややこしw
でもそんな奇跡のようなことってあるんですねw