山ナメクジの呪い
投稿者:ねこじろう (154)
凉太の家は農業を営んでいて、棚田で米を作っていた。
あと山中に入り山菜を採ったり、木を切ったりもしていた。
そういうわけで住んでいたところは山の麓だったから、巨大なヤマナメクジもよく見られた。
以前に同じクラスの友だちが山の中で1mのナメクジに食べられそうになったという話を自慢げにしていたことを、凉太は聞いたことがある。
彼は夜1mのナメクジを想像して、布団の中で震えていた。
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凉太が風呂に入っていると、タイルの壁に必ず一匹はへばりついていた。
多いときは2、3匹いたりした。
だいたい4、5㎝くらいで、大きいものは7、8㎝あった。
そんな時彼はいつも大声でじいちゃんを呼んだ。
すると真っ黒に日焼けした皺だらけのじいちゃんがトレーナー姿で嬉しそうに現れ、割りばしに挟んで袋にポイポイ入れる。
時には塩をかけたりもしてくれた。
ナメクジはみるみる小さくなっていき丸くなって、ポトリと壁から落ちる。
凉太はその様子を気色悪さと不思議な気持ちで、ただ呆然と眺めていた。
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それはある夏の日の夕暮れどきのことだ。
庭の方から、じいちゃんの呼ぶ声が聞こえてきた。
凉太が走って縁側に行くと、夕日を背中にトレーナー姿のじいちゃんが袋を持って庭の真ん中に立ち、皺だらけの黒い顔をさらに皺だらけにしながら手招きしている。
足元には、なぜか小さな携行缶があった。
凉太が丹羽履きを履き近づくと、「ほれ」と嬉しそうに袋の中を見せてくれた。
そこには、数十匹の大小のナメクジが、ヌメヌメと蠢いている。
凉太は思わず顔をしかめ、後ずさりした。
じいちゃんはそんな様子を眩しげに見ながら「よく見とけよ」と言い、袋を逆さまにして地面の上に『ナメクジのてんこ盛り』を作った。
ヌメヌメと蠢くその『てんこ盛り』を、こわごわ見ている凉太をよそに足元の携行缶を持つと蓋を開け、透明の液体を『てんこ盛り』にかけだした。
油のきつい匂いが漂う。
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