8月の空
投稿者:月子 (10)
短編
2025/01/05
01:25
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そのあまりにも大きすぎるショックから
学校に行けず、毎年こうなってしまっているの、と
どこかぼうっとしたような目でSちゃんは続けました。
かける言葉がわかりませんでした。
S「次はね、ばあちゃんかもしれないの」
次って、そんな無情なことあるか、
絶対ない、そんな悲しいことを言うなと、
私は言えませんでした。
Sちゃんの纒う空気に慄いたからです。
S「私のまわりの人、大事な人からひとりずつ、
八月に死ぬ」
Sちゃんの目が、どんどん曇るのを見ました。
もう夏は終わった十月の公園に、
なまぬるくて、それでいて熱くて、
重い空気が、じっとりと吹きました。
夏にかくような汗を、かきました。
S「〇〇もだね」
ぐっと吐きそうになるのを抑えて、
私は何も言わずにその場を去りました。
もう夏じゃないのに暑くて、
まだ冬じゃないのに寒くてたまらない、
秋の日でした。
最後にこちらを見たブランコを漕ぐSちゃんの顔は
逆光で見えませんでした。
真夏の太陽がぎらりと差して、
鮮烈に影を描き出したようでした。
…という、オチもなにもない話なのです。
現在、Sちゃんとは一切の連絡をとっておりません。
というか、あの日から会っておりません。
あんまり怖くって、私が耐えられなかったもので…。
この話は怖かったですか?
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不思議やな。
ええ、不思議なことです。
あれ以降会っていない彼女が気がかりです。
by月子