8月の空

それまで聞いたことがない暗さでした。

私は居住まいを正し、話を聞く体勢をとりました。

S「私ね、八月が怖いの」

Sちゃんが語ったのは、空白の二ヶ月についての真相でした。

まず、なぜ連絡が取れなかったか。

それは、三年続けて、八月に

彼女の身内に不幸があったからだそうで。

一年のときは、彼女の伯母。

幼い頃からよく面倒を見てくれた恩人で、

彼女は伯母をひどく慕っているようでした。

正義感の強い彼女の伯母は、

溺れている子供を助け、代わりに…。

二年のときは、彼女の祖父。

彼も、彼女を幼少期から可愛がり、

育ててくれたそうです。

海に遊びに連れて行ってもらったそうですが

そのとき彼が操縦する船が転覆し、そのまま。

Sちゃんは砂浜で遊んでいたらしく、

船には乗っていなかったといいました。

三年のときは、彼女の母親。

元々情緒が不安定で、精神的な病に苦しんでいたと聞きました。

その母親に代わり、伯母、祖父母が

Sちゃんの保護者として一緒に暮らしていたと。

母親は躁鬱の波に飲まれ、薬を過剰摂取したまま

浴槽で…

それから、それを発見したのは、私だったと

Sちゃんは話しました。

全部そうだったと。

伯母さんも、じいちゃんも、お母さんも、

私が見つけた、と。