ひとくち怪談─子ども編─

「あんた誰？」って。

　そしたら──

「気づかなかったらよかったのに」って。

　娘とそっくりな声で、吐き捨てるように言って……
　ふっと消えたんです。

　そのあと出かけていた姉の方が帰ってきて。妹の方にも確認したんですが、その時間帯にリビングに入ってないとのこと。「やっぱり、どっちでもなかったんや」って思ったんですって。結局それっきりで、何もなく今日にいたるんですけど……

　今でも、怖くなるんだそうです。

　あの時気づかなかったら、どうなってたんやろうって。

　もしかしたら構ってちゃんの幽霊が、娘の姿を真似して出てきたのかもしれない。でも彼女は、あの娘の姿をした何かに悪意のようなものを感じたって言うんです。それに、ドッペルゲンガーに乗っ取られる話ってあるじゃないですか。

　もし、あの時気づかなかったら。

　そのまま入り込まれて。

　あとから帰ってきた本物の娘に。