「だから…正確には、あのバスに乗っている人達の中で、あなただけが…空いている席に見えているんでしょうね」
鎖に朝の発言の答えを聞きに来た時点で、ある程度はオカルトめいた話に派生する事ぐらいは予想していた。
だがこうもまっしぐらとは。
「じゃ、じゃあさ……お前から見てあの席はどうなってんだ」
もう核心に触れる所まで話を進める。
心音は早まっている。
鎖はスイーツサンドを食べ終えたのか口をハンカチで拭くとしばらく無言でランチボックスを片付けていたが、片付け終えると一言発した。
「女の人が…座ってる」
「え」
想像の範囲にドストレートで突っ込んでくるような回答だった。
はっきり言ってこの会話に助走がつき始めたあたりで最後はこんな結論を突きつけられるんじゃないかと内心焦っていた。
悪い予感に限って当たる。
「で、でもおかしいだろ、俺がそこに座ってるんだから……それともなんだ、体が幽体離脱みたいに重なってるって言いたいのか?」
あまりの驚きに会話のトーンがヒートアップしている俺に対して鎖が「まぁ落ち着きなさい」と言うかのように手のひらをこちらへ向けてきた。
きっと、鎖は落ち着いて喋るのが好きなんだなと、この短時間で何となく感じ取った。
俺が乗り出し気味の姿勢を正したのを確認すると鎖は続けた。
「私から見たら、その女の人があなたに席を譲っているように見えるわ」
これは、鎖が俺をからかっているのか。
正直半信半疑だ。
俺は、この不思議ちゃんのいう事をどこまであてにしていいのか。
あてにするとして、この不思議ちゃんの言うことを仮に信じるとして、どうしても1つ解せない部分がある。






















えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?