「死の匂い」
「は?」
やっぱりこの女は紛うことなき不思議ちゃんだ。
それとも死という概念に匂いがあるとでも言いたいのかこいつは。
疑念に染まりきった俺の顔をものともせず鎖は続けた。
「それも、昨日より随分と強くなってる……あなた、今夜中には死ぬんじゃないかしら」
「は、はぁ!?」
俺は明日を迎えられないのか。
しかし目の前の女はそう言っている。
あの座席の正体を昨日予言し見事に当てた女が、今度は俺が今日中に死ぬと、予言しているのだ。
「ほら、あなたの彼女が来たわよ」
鎖は指をさす。
その方向を見るとバスが迫ってきていた。
俺らの前に止まるとプシューという音と共に自動ドアが開く、いつも使う最寄り駅行きのバスだ。
俺は妙にドキドキしながらバスの中を覗き込んだ。
満席だ。
全ての席に人が座っている。
つまり、俺がいつも座るあの席にも。
例の席に座っている女は首だけを回転させてこちらを見つめている。
口元はニィィィっと笑っている。
あの女だ。
なるほど、鎖にはいつもこう見えて居たのか。
絶対に座らないと言う鎖の言葉にもこれなら納得できる。
他の乗客がこの状況に違和感を感じていないところを見るにきっと他の人にはあの女は普通の女に見えているとか、そんな所だろうか。
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えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?