「その様子だと、見えるようになったのね」
「家にまで出たし…一晩中格闘したよ」
俺の苦労話をなんともつまらなそうに鎖はただ「そう」と答えた。
ちょっと離れすぎてるからその声量で話すのならもう少し近くに寄って欲しいのだが。
「な、なぁ鎖……どうすればいいと思う」
「あら…それだけ熱烈に愛されているんだもの……潔く連れてかれてあげればいいんじゃない?」
ここに来て初めて少しだけ鎖の口調が柔らかくなる、楽しそうにしてやがる、このドS女が。
やはりこの女に頼っても骨折り損かもしれない。
「ていうかなんでそんな離れてんだよ、距離取りすぎだろ」
ズカズカと鎖に近づいてみせると鎖はわざとらしく離れていく、鬼ごっこかな。
しつこく近づいたら落ちてた石を拾って投げつけてきたので流石にやめた。
普通に危ない。
「あなた…臭いのよ」
「えっ゛」
軽蔑の視線で俺を見てくる。
慌てて腕の裾や肩の部分に鼻を近づけて自分の制服の匂いを嗅ぐ。
母さんがいつも買ってくる柔軟剤の匂い。
ちゃんと洗濯もしてるし臭いとは思ってなかったのだが、思わぬショックを受けた。
「あー、…体臭じゃなくて……」
鎖は手でわざとらしく鼻を覆いながら冷たい目で俺を見る。
この話は怖かったですか?
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えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?