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意味怖(意味がわかると怖い話)

きのこさんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

Sさんのこども
短編 2024/12/23 09:58 267view

 Sさんの子どもは二人。上が息子さんで、下は娘さんだ。
 息子さんはようやく今年の春に幼稚園に通い始め、娘さんはまだ3歳。
 新築の家を購入する時に二人の子ども部屋は作ったものの、今のところ使用されたことは無い。眠るとき、一人になることを子どもたちが嫌がり、結局夫婦の寝室に布団を並べて家族皆で眠っている。

 その日も、Sさんはいつものように子どもたちと並んで布団で眠っていた。

 ふと、扉が開く音で目が醒めたのだという。
 Sさんは体を横たえたまま、首だけ起こして扉を見た。リビングで夜更かしをしていた夫が寝室に来たのだと思ったのだ。

 だが。
 薄く開いた扉から覗く姿は、やけに小さい。
 廊下の間接照明を背後から受け、その姿は暗く沈んで、ぼんやりと立ち上る陽炎のように見えたと言う。

「〇ちゃん?」

 Sさんはその小さな体から、てっきり自分の娘だと思った。
 気付かずに一人でトイレに行き、戻って来たのだろう、と。

「えらいね。こっちにおいで」
 そう言って、Sさんは目を閉じ、再び枕に頭を埋めた。小柄な影が、室内に入ってくる気配があり、Sさんはわずかに掛け布団を持ち上げてやる。するり、とその小柄な体は迷い無く布団の中に忍び込んできた。Sさんは薄く目を開き、自分の布団に入って来たその子どもを見る。

 そして。
 思った。
 何故、この子は、洋服を着ているのだ、と。

 Sさんに背を向けて横たわるその小柄な体は、洗いざらしの白いブラウスと、スカートの肩紐らしいものが見えた。
 顔は見えないが、肩口で切りそろえたような髪は、汚れてよれて、頭皮脂のせいで髪束ができている。その髪の隙間からうっすらと覗く首は、垢で汚れていた。全体的に、つん、と古い油のような匂いがしたという。
 うちの子じゃない。

 Sさんはそう思った。

 うちの子は、今日もお風呂に入り、パジャマを着ているはずだ。
 いや、そもそも。
 大きいのだ。
 布団にもぐりこんだこの子は、どう見ても、小学生ぐらいに見える。

 Sさんはあわてて首をねじり、背後を見る。
 そこには。
 Sさんの娘さんが寝息を立てて眠っていた。

 誰だ、これは。

 そう思った瞬間。体が動かなくなった。
 ゆっくりと。
 ゆっくりと、向かいの子どもが、Sさんに向き合おうと寝返りを打ち始める。Sさんは目を瞑って帰ってと願った。

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コメント(1)
  • これからもほぼ毎日2〜3件投稿しようと思います。
    どうぞよろしくお願いします。
    byきのこ

    2024/12/23/10:00

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