父の人生
投稿者:太山みせる (37)
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1週間後、成太の様子が急におかしくなり、病院に連れて行きました。
医師も原因が分からないと言いながら、それでも懸命に処置をしてくれました。
しかしその甲斐もなく、成太はその夜遅くに亡くなりました。
まさか本当に、父が連れて逝ってしまったのでしょうか?
あの優しい父に限ってと強く思い、どうにか、その考えを払拭しました。
あまりの絶望に、私の記憶は所々ありません。
それでも家族や周囲の人たちのお陰で、どうにか無事に、我が子の葬儀を終えることができました。
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葬儀の1週間後、今度は母が亡くなりました。
朝起きて、いつも早起きの母がいないので、見に行ったらベッドの中で冷たくなっていたのです。
立て続けに家族が亡くなって、志郎や周囲の人たちは慰めてくれましたが、私は母まで父が連れて行ったという疑念でいっぱいになりました。
洋一さんに夢の話をしました。
父が2人を連れて逝ったのではないか、そんな風にしか思えなくなっていました。
洋一さんは、
「そんなことをする人ではないよ。お子さんとお母さんは、きっと寿命だったんだよ。君たち夫婦はまだ若い。悲しいだろうが、また子供も生まれるかもしれないし、毎日を踏ん張って生きていきなさい」
と父への疑念を否定し、励ましてくれました。
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どんなに悲しいことがあっても、生きている以上は毎日を過ごさなければなりません。
私たちは少しずつ、落ち着きを取り戻しました。
そんなある日、志郎と車で買い物に出ました。
志郎の運転で車を走らせていると、切り立った崖道のところで、突然上から大きな衝撃が襲ってきました。
「ああっ‼︎……」
大きな岩の落石があったのです。
車はそのまま、ガードレールを突き破って、崖から落ちました。
どのくらい時間がたったでしょうか?
意識は戻りましたが、全身に激しい痛みがあります。
隣を見ると、志郎は明らかに絶命していました。
「なんて……ことに……志郎まで……」
体が動きません。
そのうちに全身が寒くなり、目の前が暗くなってきました。
気も失いそうです。
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