「で…け ば…た」
投稿者:ねこじろう (149)
女の両目は真っ赤に充血していてね、そこから血のような涙が流れていて、その口は呆けたように開いていた」
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「ひ!」
私は小さく悲鳴を上げた。
周囲に座る何人かの客が驚いてこちらを見る。
ちょっと気恥ずかしかった私は、場をごまかすように傍らの窓に視線をやった。
もうすっかり日は落ちていて、店前の道路を次々に車が横切っていた。
愛美はコーヒーを一口飲むと、続けた。
「私がヒステリックに悲鳴をあげると、驚いて目を覚ました学が「どうした?」と心配げに声をかける。
電気を点けて改めて天井を見た時、不思議なことにもうあの隙間はなかった。
わたしは俯き呻きながら頭を抱える。
隣から優しく背中をさする学に、それまで感じていた人の気配や視線のこと、そしてたった今天井に見えた白い顔のことを打ち明けたんだ。
全て聞き終えた彼はしばらく黙りこくっていたんだけど思い当たることがあるのか、やがて深刻な面持ちで『実は』と切り出し訥々と打ち明けてくれた」
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「学は、わたしと出会う数年前まで母親と二人でこの家に暮らしていたそうなの。
彼の父親はあの辺一帯の土地やアパートを持った地主だったみたいでね、父親が早くに亡くなってからは、それらの不動産収入で親子二人暮らしていたみたい。
シングルマザーとして彼女は女手一つで学を大切に育ててきたらしくてね、彼が社会人になってからもあの家に二人で暮らしていたみたい。
学にとって母親は理想の母であり女性だったらしくて、母親も彼を溺愛していたようなの。
そういうことで彼は40過ぎても一般の女性とまともに交際したことがなかったらしいの。
だけど二年ほど前に母親に乳ガンが見つかるんだ。
癌は既にかなり進行していて、余命いくばくという状態だったらしいの。
その時は軽く認知症も患っていたようで、喋っている内容もたまに常軌を逸していたらしいんだ。
母親は最後はあの家の畳の間で息を引き取ったそうなんだけど、病の床で彼女は学に一つお願いをしたみたい。
それは自分が亡くなり骨壺に納まった後も、それをこの部屋を見渡せる場所に置いておいて欲しいって。
毎回、楽しみにしてます。
コメントありがとうございます。
━ねこじろう
面白かったです。 次回も楽しみに待ってます。
売女?
コメントありがとうございます
そうです、ばいた(売女)ですね
━ねこじろう
なるほど、ありがとござます
売女「うりおんな」だとおもってたww