不倫おばさん

不倫に夢中の宮本さんは徐々に掃除やファーストフード作成を手抜きするようになり、周囲が何度か注意することが増えてきた。

ところが。

何でも自分の思い通りになることで調子に乗ってしまい、かなりえげつない人間に変わってしまった。
いや、元々嫌らしい人間だったのかもしれないが、最初は大人しくしていただけかもしれない。
どっちにしろ、宮本さんの急変に私もバイト仲間も困惑するばかりだった。

バイト仲間の助言が疎ましいのか、徐々に同性に対して横柄な態度を取り始めるが経営者には媚を売りまくって保身行為に走る。
そこまでして不倫したいのだろうか・・・呆れて何も言えなくなる。

そのうち注意してくるバイトを無視するようになり、私も無視されることが多くなってきた。

ただ、菜々美だけは例外で、宮本さんに気に入られるようにうまく立ち回ったようだった。
相変わらずうまく情報を引き出しているようだ。

菜々美から宮本さんの話を聞けば聞くほど心に衝撃が走る。
世の中には様々な考えを持っている人で構成されていることを思い知らされる。
不倫を当たり前のようにやる人もいれば、恋愛のれの字すらない人だっている。

だから、自分に害がなければ気にする必要などない・・・それが菜々美の考え方なのだ。
そこら辺は経営者と似ているかもしれない。
ただ、宮本さんの不倫が私達に全く関係ないかと言われたら実はそうでもない。

何故なら・・・。

バイト中に不倫相手を物色していることが大問題だった。

男性客の間で「あのコンビニには不倫相手を探している女の店員がいる」と噂になっていた時期があった（これも菜々美の探りで判明したこと）。

夕方勤務の女性バイトは男性客から舐めまわされるような視線でじろじろ見られて気分が悪くなった日もあったという。

そういう私もレジ接客中に素性がよく分からない男性客に急に手を握られて物凄く怖い思いをしたことがあった。

菜々美も常連客から「噂の女の人ってのはあんたかい？」とニヤニヤしながら質問されたことがあった。
もちろん、あの強かな菜々美のことだ。
嫌らしい常連客を得意の饒舌で返り討ちにして実力差を見せつけた模様。