マッチングアプリの怪物
投稿者:ねこまんま (1)
「え…あ…そちらの娘さんが…Aさんじゃないんですか…?」
しどろもどろになりながら言葉を絞り出して尋ねると母親が
「ガッハッハッハッ!やだよちょっとぉ!Aは私!こっちは娘のB子!」
と僕の背中を女性とは思えない力でバンバンと叩きました。
「え?え?でも…だって写真は…年齢も28歳って….」
そう困惑する僕に母親が
「だってプロフィール写真に私みたいなおばちゃんが写ってたら誰も相手にしてくれないでしょ?年齢だって55歳って最初から書いてたら見向きもされないだろうから娘の年齢を記入しちゃったのよぉ!」
とさらに僕の背中をバンバン叩いてきました。
助けを求めるかのようにB子さんの方を涙目になりながらチラチラと見てると
「ごめんなさい…どうしてもお母さんに良い人を見つけて欲しくて…」
と申し訳なさそうにB子さんが謝ってきました。
目の前の景色がぐにゃあっと歪んだ気がしました。
僕が今までやり取りしていたAさんは実はこの母親で、僕がAさんだと思い込んでいた人はAさんじゃなかったのです。
「じゃあ…前の旦那にDVされて…働きながら子供を育てたっていうのも…」
ワナワナと震える口でそう尋ねるとB子さんが
「それは本当なんです、離婚して今まで働きながら私のことを大切に育ててくれて本当に優しいお母さんなんです」
と言いました。
それを聞いて僕が黙りこくっているとB子さんはさらに続けて
「それに趣味が全く同じ△△さんとマッチしてメッセージしてるお母さんが本当に幸せそうで今度こそ上手く行ってほしくて…だからせめて一日だけでもお母さんとデートしてもらえませんか?」
と泣きそうな顔で懇願してきました。
そこまで言われると元々断る事が苦手な性格の僕は断るに断れなくなってしまい
「はい…」
とその場の流れでデートの申し出を承諾してしまいました。
するとB子さんの表情が明るくなり
「ありがとう!本当にありがとう!」
と僕の手を握ってきました。
その瞬間自分の顔がだらしなく締まりのないにやけ顔になっていくのがわかりました。
か
「じゃあ私は彼氏と約束があるから、後は若いお2人で!」
と言っていたずらっぽくニコッとこちらに笑いかけるとB子さんは嬉しそうに駅の方に去っていきました。
「彼氏…?うわぁ最悪だ、B子さん彼氏いるんだ…」
と落胆しているとB子さんの母親、もといAさんが
「じゃあ行こうか、へっへっへ」
と言い凄い力で僕の手をグイグイ引っ張ってきました。
「ご飯だけ付き合って、その後は適当な理由をつけてさっさと帰ろう…」
そう心に決めて僕はAさんにされるがままに手を引かれて歩き始めました。
僕とAさんの好物は味噌カツで、味噌カツが美味しいと評判のお店を予約していたのでそのお店に2人で向かいました。
話は違うが、格安風俗に行った時のことを思い出した。
出てきたのがフツーの60代半ばくらいのかなり瘦せた人(それ専門系の店ではない)。
この手の怖い(?)話には、案外似たような体験が元になっているのかもしれない。
悪夢でしたね。
事実は小説より奇なりですね。
怖かったと思います。