マッチングアプリの怪物
投稿者:ねこまんま (1)
僕よりも一回りも大きい体の中年女性が小柄な青年の腕にしがみつきながら歩く図はまさにゴリラに捕まった子鹿
道ゆく人々に奇異の目で見られるのは必然で
「もう帰りたい…」と心の中で思いながら僕らは予約したお店へと足を進めました。
そしてそのお店に到着した僕らは店員さんに名前と人数を伝え、予約していた個室の席を案内されました。
「ふー、よっこらしょういち」
と言いながらドカッと席に座るAさん
椅子が苦しい助けてくれと言わんばかりにミシミシと悲痛な音を立てます。
そのままおしぼりで自分の顔をガシガシと皮膚が取れそうな勢いで拭きながら
「何食べようかねぇ」
と僕に尋ねてきました。
この場を早く切り上げたかった僕は適当にメニュー表を見て
「じゃあ僕はひれとんかつで…」
と一番最初に目に入ったメニューを注文することにしました。
「じゃあ私はロースとんかつ!」
と言うとバン!とテーブルを叩いてきたので僕は思わずビクッと肩を揺らしてしまいました。
「こんな心臓に悪い人と食事しなきゃならないのか…」
と好物である味噌カツの美味しいお店にいるにも関わらず最悪の気分でした。
そして料理が来るまでの間、特に興味もないAさんの推しである男性アイドルグループのメンバーの話を延々とされ続けて愛想笑いで表情筋が痛くなってきました。
「でもきっとこの人は悪い人じゃないんだ、メッセージではあんなに包容力があって優しい女性だったんだから」
となんとか自分に言い聞かせてメンタルを保つ事にしました。
しかし料理がテーブルに運ばれてからのAさんの暴虐さはより凶悪さを増すばかりでした。
まずAさんは食べる時に咀嚼音をクチャクチャと鳴らすクチャラーだったのです。
しかも口の中に食べ物が入っている状態で喋るので口の中のグチャグチャになった味噌カツが見えるし口からボロボロと食べカスと唾がこぼれ落ちていました。
この時点で仮に相手がどんなに美人だったとしても百年の恋も一瞬で冷めてしまうレベルなのにそれだけでは飽き足らず
食事中にも関わらずガッハッハ!と笑った拍子にブッ!と他のお客さんに聞こえるほどの大音量で放屁をかましたり、水を飲む際にガラガラガラとうがいをしてそのままゴクリと飲んだり
そして極め付けは鼻をかんだティッシュをまだ中身が残ってる味噌汁の器に入れるというマナーの悪さでした。
味噌汁に鼻毛と緑色の鼻くそ混じりの鼻水がじわぁっと滲んでいくその様子を見てもう限界でした。
それまではAさんの事をなんとか女性として見ようと必死に努力してきましたが僕は完全にAさんの事が生理的に無理になってしまっていました。
僕はもう早く帰りたいその一心で店員さんを呼んでテーブル会計を済ませようと2人分の料金を支払おうとしました。
「あらぁ!若いのに何生意気に奢ろうとしてんのぉ!私に甘えちゃいな!」
とAさんがクレジットカードを出そうとしました。
ここに来てようやく大人の振る舞いを見せるAさんでしたがどうしてもAさんに対して借りを作りたくなかった僕は
「いえ、楽しい時間を過ごさせていただいたので!それに歳上でも女性に出させるのはマナー違反なので僕に出させてください!」
と心にも思ってない口から出まかせを言い、Aさんの好意を突っぱねました。
今にして思えばこの選択が大きな間違いでした。
話は違うが、格安風俗に行った時のことを思い出した。
出てきたのがフツーの60代半ばくらいのかなり瘦せた人(それ専門系の店ではない)。
この手の怖い(?)話には、案外似たような体験が元になっているのかもしれない。
悪夢でしたね。
事実は小説より奇なりですね。
怖かったと思います。