俺にしか見えない影の話
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/09/14
10:35
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そして午後の検温の時のこと。
担当の若い看護師がベッドの傍らで、俺の血圧を測りながらボソリと呟く。
「良いおばあちゃんだったのに、鈴木さん残念だったね」
「え、鈴木さん、亡くなったの?」
「え、知らなかったの?今朝突然苦しみだしたから急遽集中治療室で救命措置をしただけど、ダメだったみたい。
急性心臓発作だったということよ」
途端に俺の脳裏に今朝レストルームで目撃した、あの光景が甦る。
━あの時ストレッチャーで運ばれていたのは、鈴木さんだったんだ。
それじゃあ、あの時いた、あの黒い人影は?
その時同時にあの無表情な青い女の顔が思い出され、じわりじわりと腰から背中に向かって冷たいものが這い上がっていく。
看護師が立ち去った後も俺はベッドで半身を起こしたまま動くことが出来ず、ただじっと虚空を眺めていた。
※※※※※※※※※※
翌日の日曜日は朝から、母が見舞いがてら洗濯物を取りに来てくれた。
午後からは大学の友人SとYが見舞いに来る。
俺と同じ「オカルト研究サークル」の部員だ。
ベッド横の丸椅子に座った二人は俺に気を遣ってか、終始出来るだけ楽しい話題を喋ってくれていた。
「でな、俺たち今から地域で噂の廃墟に探訪に行ってくるんだ。
お前も早く体治してから一緒に行けるようになれよ」
Sの言葉を最後に二人はそれではと立ち上がる。
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