俺にしか見えない影の話
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/09/14
10:35
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俺は見送りしようと、ベッドの反対側に置かれた車椅子に乗ろうとしていた。
そして何気に病室の片隅に視線をやった時だ。
━あいつが立っている、、、
窓から漏れる気だるい西陽に包まれて、いつもの影法師のような風体で窓際にひっそりと佇んでいた。
そして影の奥からボンヤリ覗くあの青い顔。
死んだ魚のような2つの目は、じっと友人二人を捉えているようにも見える。
俺はベッドの端に座ったまま固まり、動くことが出来なかった。
心臓が激しく脈打っている。
友人らはその間にじゃあなと言ってから、ドアへと歩きだす。
俺はなんとか肩越しに振り向くと、Sの背中を凝視しながら声を絞り出す。
「いくな、、行くんじゃない」
だが二人は俺の声に気付くことなく、笑いながらドアを開き出ていった。
そして窓際にいた【影】も、まるで床を滑走するかのように俺の横側を通り過ぎ、ドアを開けることなく部屋から消え失せた。
【了】
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