S村からの電話
投稿者:ねこじろう (147)
『どうしたんですか?』と彼の見る方に視線をやった俺の背中に冷たい戦慄が走り、一気に心臓が激しく脈打ちだす。
手だった。
一本の筋張って干からびた手が仲谷の足首を掴んでいた。
その向こうには、まるで意志を持つかのようにうねうね漂う白い煙の塊。
そして煙の中に見え隠れしているのは、、、
白い浴衣姿の痩せた老婆。
ボサボサな白髪の隙間から覗いているのは、血走った二つの目。
はだけた浴衣の胸元からはあばら骨がくっきり浮かび、手足は枯れ木のように細い。
そして四つん這いのまま伸ばした手で仲谷の足首をしっかり掴んでいた。
俺は村山さんと二人恐怖と戦いながら必死に仲谷の足を異形の老婆から引き離すと、ようやく仏間から連れ出すことが出来た。
それから結局村山さんと俺は二人して仲谷を家屋から連れ出し、何とか車に乗せる。
そして村をあとにした。
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村山さんの目論見とおり、大事になる前に無事仲谷を生還させることはできた。
だがその後も彼の様子は変わることはなく、最終的には身内によって山あいにある精神医療施設に入所させられる。
その後詐欺的な商法で怪しげな健康器具を販売していた会社「シニアライフ」は各地で民事訴訟を起こされた。
村山課長は会社に訪ねてきた原告側の弁護士を応接室で対応している途中、お手洗いと言って席を立った隙に窓から飛び降り亡くなった。
会社はほどなくして倒産。
仕事を失った俺は、しばらく大阪でバイトとかで食いつないでいたが結局、こっちに帰って実家の家業を手伝いだしたんだ」
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ここで田嶋の話は終わった。
辺りを見渡すといつの間にか店内はずいぶん混みだしてきていて、活気が出てきている。
俺は最後に二人分ジョッキを注文すると、もう一つ彼に気になっていた質問をした。
「ところで初めにお前が言った、一月前に大阪に行ったもう一つの目的というのは?」
田嶋は俺の顔を見て軽く微笑むと、また話し出した。
怖かったですヽ༼⁰o⁰;༽ノ
お祓いしてもらえばいいのに。
コメントありがとうございます。
━ねこじろう