「あの日村山さんと訪れたS村に行ってみたんだよ。
今はどうなっているか気になってね。
施設で仲谷に面会し電車ローカルバスと乗り継いだ後、汗を拭いながら農道を歩きあの鬱蒼とした木立の前に立った時は、もう随分日も暮れかけていたな。
そしてそこを抜けた先に広がった光景に俺は愕然としたんだ」
ここで田嶋は一旦口をつぐみ俺の顔を見てゴクリと生唾を飲み込むと続ける。
「そこには家屋など一軒もなかった。
あったのは夕暮れの朱に染まった荒れ果てた寂しげな共同墓地だけだった」
「え!?じゃあかつてお前が上司と行ってから同僚を助けだしたS村というのは?」
真剣な目で尋ねる俺を横目に田嶋は最後に一つ大きくため息をつくと、こう言った。
「分からん。
ただはっきり言えることはあれは夢や幻なんかではなく、現実に起こったことということ。
そして今も仲谷は大阪府M市の郊外にあるあの医療施設で一人、誰もいない暗闇に向かって繰り返し怪しげな商品の売り込みをしているということだけだ」
【了】
前のページ
10/10
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 56票
























怖かったですヽ༼⁰o⁰;༽ノ
お祓いしてもらえばいいのに。
コメントありがとうございます。
━ねこじろう