右肩の痛みとおばあさん
投稿者:メガ (6)
介護を仕事に選ぶ人間は仕事にあぶれてその職を選ぶ人間か、人に優しい人間で高い意識で仕事をしているかで真逆ではあります。
私の同僚は後者のタイプの方で、その彼女の体験談です。
私がとある施設で働き始めの頃、私の教育官として指導に当たってくれた彼女はずっと年下でしたがはっきりした物言いをする方でした。
子育てで随分現場を離れていた私には初めからやり直しに近い状態でしたが彼女はしっかりと指導してくれました。
その彼女が担当していた利用者さんの中に96歳になるおばあさんがいらっしゃいました。
見守りは必要でしたが手押し車を扱いながらご自分でトイレにはいかれるし、少しの散歩ならばご自分で園内を散歩されたりと割と元気な感じでした。
愛らしい感じで物腰こそ柔らかなように最初は見えていましたが、この方なかなか頑固な方で自分からお願いしたことが通らないと感じとるや大きめの声で「◯◯をお願いします!」と言い出すのです。
そんな96歳のおばあさんを時には冗談を言ったりなだめすかしたりして同僚の教育官さんは接していました。
コロナが流行り始めた頃、そのおばあさんの体調にちょくちょく異変が起き始めました。
少しずつ体調を崩していき病院に転院することが決まりました。病院系列の施設とはいえ完全別棟になってしまうと断片的にしか状態がわかりません。
職員同士はあのおばあさんが今回もまた元気に戻ってくるかもと願っていたのですが、二ヶ月も経った頃亡くなった知らせを受け取りました。
同じぐらいの頃から教育官さんがしきりに肩を痛がるようになりました。「何やろね、右肩ばっかり痛いんやけど」「それ!私も!」と同じくおばあさんと長い付き合いの別の職員も同じ場所を痛がるのです。
「もしかして◯◯さんだったりするかね?」「かもね〜」「私らに構ってないでご家族と過ごしておいでよ」教育官さんは肩をポムポムと叩いてから仕事に戻っていきました。10日も経つ頃には肩の痛みはなくなってしまったらしく平然とされていたのでたずねると「◯◯さんの夢を見たんよ。笑顔でね。」と教えてくれました。
おばあさんは最後に律儀に挨拶にこられていたのでしょう。二人の関係は施設利用者と介護職員ではありますが、二人にしかわからないいろんな時間を垣間見たきがしました。
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