様々な思念が頭を駆け巡りなかなか寝付けなかったのだが、疲れもあったせいか、ようやく微睡みの泉に嵌まっていった。
※※※※※※※※※※
やがて私の視界には古い映画の一場面のような光景が広がる。
頭上にはセピアカラーの不穏な薄曇りの空。
私はというと、どこだろう?周りを木々に囲まれた薄暗い遊歩道を一人早足で歩いていた。
鬱蒼とした木々の間を白蛇のような霧がうねうねと蠢いている。
どうやら尿意をもよおし、トイレを探しているところのようだ。
ふと前方を見ると50メートルくらい先に、ポツンと公衆トイレがあった。
今にも壊れそうな古びたトイレ。
慌てて男性用に駆け込む。
それからなんとか用をたし洗面所で手を洗う。
そして何気に顔を上げ正面の鏡に視線をやった時だった。
一瞬で全身が総毛立つ。
うわあああ
私は悲鳴を上げ後方に尻餅をついた。
鏡には頭頂部が割れ薄いピンクの脳ミソを覗かせる梶原が、じっとこちらを見ていたのだ。
次の瞬間、誰かが右肩に手を乗せる。
驚き目を開き背後に目をやった。
そこには心配げな様子で私を見る妻の奈津実の顔がある。
「大丈夫?すごくうなされていたけど」
私は正気に戻ると、
「ああ、変な夢を見たみたいだ」と言い額のぬるい汗を拭う。
すると奈津実は「そんなことより、さっきから玄関の方から音がしてるみたいなんだけど」と言ってから、また私の顔を見た。
この話は怖かったですか?
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さすが、という内容でした。
面白かったです。
とく
お褒めの言葉、ありがとうございます
─ねこじろう
読みごたえ、ありました。
ありがとうございます
─ねこじろう
1ページ目の「そのビジネスホテルは駅のすぐそばだったから…」はカプセルホテルの間違いかと思います。
この話では駅前のビジネスホテルの一部フロアをカプセルとし、他のフロアは大浴場及びシングルダブルの一般のビジネスホテルフロアという設定にしたのですが。
━ねこじろう
「微唾みの泉」とは何でしょうか
知識不足ですいません..
私がよく使う、眠りに落ちるときに用いる表現です
ちょっと象徴的すぎましたか?━ねこじろう