かぷせるほてる
投稿者:ねこじろう (147)
ここまで喋り若い方の刑事は一度咳払いをすると、再び続けた。
「梶原さんは7階非常口踊り場から身を投げた後再び自力で階段を上り、自らのカプセルまで戻ったということになります。
そしてさら信じられないことなんですが、彼はベッドに戻る前に黒田さんのところにも立ち寄ってるんです。
実際ホテルの防犯カメラを調べたところ、非常階段を四つん這いで這い上り6階と7階フロアの廊下を足を引き摺りながらよたよた歩く男の画像も確認されています」
一瞬で背筋が凍った。
やはり早朝私が枕から頭を上げた時に見たのは、梶原だったのだ。
彼は飛び降りをした後、自力で歩いて私のところに立ち寄っていたのだ。
ただ7階から飛び降りした人間が、その後自ら階段を上ったり廊下を歩いたりするなんてあり得るんだろうか?
いろいろ考えていると私の脳内はパニックになっていた。
その後刑事たちは私に型通りの質問をすると、帰って行った。
※※※※※※※※※※
それから私は電話で梶原の件を会社に報告する。
そしてその後の梶原に関する遺体の引き取りや手続きについては、総務課を窓口にして身内などへの連絡をしながら進めていくということだった。
今回の件は業務中に起きたもので労災の認定もからむから、多分会社も慎重に進めていくのだろう。
私も梶原のことが気にはなっていたが、とりあえずはその日の出張先での業務を遂行することにした。
結局仕事を終え会社でその日のことを報告した後自宅に帰り着いた時、時刻は12時過ぎになっていた。
いよいよ梅雨シーズンに入ったのだろうか?玄関ドアの鍵をあけていると、ポツポツと大粒の雨が振りだしてきた。
室内はリビング以外は全て電気が消されており、どうやら妻と今年大学生になった息子も寝ているようだ。
夕飯は外で終えてきていたからシャワーを浴びた後、すぐにベッドに入ることにする。
隣に横たわる妻も既に熟睡しているようだ。
間接照明の下、寝室の天井をただじっと眺めながら私は考えていた。
─確かに最近の梶原は少し様子が変だった。
以前からミスは多かったのだが、特に最近はその内容も静観出来る範囲を超えてきていたと思う。
ただ責任感だけは異常に強く、ミスをした後の落ち込み具合も半端ないものがあった。
運転中ボソリと死にたいとも言っていたし、やはりあいつはホテルの7階から飛び降り自殺をしたのだろうか?
そしてその後彼は自力で歩き私のところを訪れ、最後は自分のカプセルに横たわっていたそうだ。
梶原が最後に私を訪れたのは、何かを言いたかったのだろうか?
それとも、、、
さすが、という内容でした。
面白かったです。
とく
お褒めの言葉、ありがとうございます
─ねこじろう
読みごたえ、ありました。
ありがとうございます
─ねこじろう
1ページ目の「そのビジネスホテルは駅のすぐそばだったから…」はカプセルホテルの間違いかと思います。
この話では駅前のビジネスホテルの一部フロアをカプセルとし、他のフロアは大浴場及びシングルダブルの一般のビジネスホテルフロアという設定にしたのですが。
━ねこじろう
「微唾みの泉」とは何でしょうか
知識不足ですいません..