お客さん、幽霊とか信じますか?
投稿者:ねこじろう (147)
娘は私ではなく家内に似たのか情熱的な気性の持ち主で、感情の起伏が激しくて恋にも仕事にも一途でいつも熱くのめりこむタイプだったと思います。
でも何かに失敗した時の落ち込み具合は、かなり酷いところがありました。
そして勤めだしてから数年後には会社の男性社員と社内恋愛の末、結婚するという話にまでなったんです。
亡くなった家内が私との結婚式の時に使用し、娘のためにタンスにしまっていたウェディングドレスを胸にあてて微笑む嬉しそうな顔を今も時折思い出したりします。
ところが半年前のある日突然、何故か美奈代は会社を辞めてしまいました。
驚いた私は彼女に理由を問います。
でもただ泣きじゃくるだけで答えてくれませんでした。
それから数日後、美奈代は自宅裏手の竹藪に分け入り、あのウエディングドレス姿で焼身自殺を図り亡くなりました。
これは後から分かったのですが、娘の恋人だった男性は社内の他の女性と結婚したということでした」
「酷い男ですね。それではあまりに娘さんがかわいそうだ」
「はい。
私にとって美奈代だけが生き甲斐でした。
ですから娘がいなくなった後からの私の毎日は生きているのか死んでいるのか分からないような日々でした。
死のうと何度思ったことでしょうか。
いや今でも思ったりします。
こんな張り合いのない人生なんかより、天国でまた美奈代と一緒に暮らす方がどんなにか幸せかと。
仕事にも意義を見いだせなくて、三カ月前に辞職しました。
それから長らく暮らした一軒家も手放し、その後は最近こちらの市内のアパートに引っ越したんです。
それからしばらくは酒浸りの自堕落な日々を過ごしていたのですが、こんなことではいけないと思い今はこちらのタクシー会社にお世話になっております」
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三島は運転手に尋ねる。
「それで結局、その怪しげな女性は乗せられたんですか?」
「はい、その方のウェディングドレス姿を見たら、娘のことを思い出してしまって、、、
どちらへ?と尋ねたら、俯いたまま黙って前の方を指差すんです。
それでとりあえず私も、そのとおり走ったんですよ」
─……確かに変だ。
深夜の繁華街の舗道にウエディングドレス姿の女性が一人。
これに似たタクシーの話あったよね。
コメントありがとうございます。
─ねこじろう