お客さん、幽霊とか信じますか?
投稿者:ねこじろう (147)
仮装パーティーの帰り?
ファッション?
それともまさか深夜に挙式?
三島が訝しげに思っていると、運転手はそのまま続けた。
「でね、まあ、あり得ないことなんですけど今から結婚式ですか?と思い切って聞いてみたんですが、その女の人やはり黙って俯いたままでね。
年齢は、、、
う~ん何歳くらいかな?
20代後半から30代くらいでしょうか?、、、
ずっと俯いていたし車内もそんなに明るくないから、ほとんど判らなかったんです。
それからは、あそこの角を左にとか右にとか、いろいろ言われてね。
かれこれ30分は走ったかな。
気が付いたらいつの間にか市北部の山裾の辺りまで来ててね。
でも相変わらず後ろの女性は俯いたまま黙っているものだから構わずさらになだらかな山道を走っていると、
突然あるところで『右に』と言われたので曲がると、そこは両脇に鬱蒼とした山林の広がる獣道で、しばらく進むと急に視界が開けてあちこち雑草の生えただだっ広い平地が広がったんです。
その正面奥まったところに、崩れかけたとんがり屋根の教会らしき建物がありました。
後から知ったのですが、そこは嘗て古いカトリック教会のあった所だったみたいなんですが半年前に大きな火事をだして建物が半焼したらしくてね、今敷地にはその残骸が残っているだけのようです。
そこは当然街灯もなくて暗くてね、私もちょっと不安になって『こんなところで大丈夫なんですか?』と言ってバックミラーを覗いた時には誰もいなかったんです」
「誰もいなかった?」
三島は以外な結末にドキリとした。
「そう、いなかったんですよ。
私ね暗い砂利地の真ん中で車を停めてから降りると、後ろの座席を隅から隅まで見ましたよ。
でもやっぱり誰もいない。
途端にゾッとしましたね」
それからは三島と運転手の間に息苦しい沈黙が続く。
やがて先に口を開いたのは三島の方だった。
「ところでその教会が半焼した原因はなんだったんですか?」
運転手はミラー越しにチラリと彼を見た後、続ける。
「私ねあの日会社に戻った後、遅番の同僚にこの話をしたんですわ。
そしたらそいつ一瞬で蒼ざめてね、怯えた顔でこんなことを教えてくれたんです。
これに似たタクシーの話あったよね。
コメントありがとうございます。
─ねこじろう