お客さん、幽霊とか信じますか?
投稿者:ねこじろう (147)
その日は午後から生暖かい雨が降ったり止んだりで、なんか気色の悪い天気でしたな。
日暮れ辺りから客足がピタリと途絶えてしまいましてね、しょうがないから日が変わるくらいからさっきの繁華街を流してたんですわ。
それから何人かをお乗せした後県道を北に登り、ちょうどお客さんを乗せた舗道の手前辺りに差し掛かった時でした。
街灯の下に女の人がポツンと立って手を上げてるのが視界に入ったんです。
私その方の風体を見た途端、ドキリとしました。
というのはね、その人なんと純白のウエディングドレス姿だったんですよ」
「ウエディングドレス?」
三島が少し驚いた様子で運転手の浅黒い横顔を見てから返す。
「そうなんです。
深夜にしかもあんな繁華街の舗道で純白のウエディングドレスの女性なんて、どう考えても変でしょ。
顔は俯いていたから分かりませんでした。
ただ艶やかな長い黒髪と体格から、恐らく若い女性であろうことだけは推測できました。
いつもだったらそんな怪しげな人とか乗車拒否するところなんですが、その人のウェディングドレス姿を見た時、私こみ上げてくるものがありましてね」
運転手の意味ありげな言葉に三島は
「こみ上げてくるものというのは?」と尋ねた。
すると運転手はダッシュボード上に掲げてある一枚の写真を指差す。
そこには長い黒髪で色白の若い女性が優しく微笑む顔があった。
「その女性は?」
三島が尋ねると運転手は一つ大きなため息をつきボソリと言った。
「一人娘ですわ。
半年前に亡くなりましたけどね、、、」
「え、いったいどうして?」
驚き問いかける三島の顔をバックミラー越しに見ると、運転手はボソボソと語り始めた。
「私は元は普通の会社員をしてました。
妻を早くに病気で亡くしましてね、それからは男手一つで一人娘の美奈代を育てていたんです。
美奈代は順調に育ってくれて地元の高校を卒業した後は、とある大手の製薬会社に就職しました。
これに似たタクシーの話あったよね。
コメントありがとうございます。
─ねこじろう