三面鏡
投稿者:とくのしん (65)
とびきり目についたのは、美容師が仕上がりを見せるために使用する三面鏡。海外から取り寄せたような、アンティーク調の見るからに高そうなヴィンテージものの三面鏡に私は一目で心惹かれていました。
居抜き物件ということもあり、看板の付け替えと内装は壁紙の貼替に一部照明を交換したりと最低限の改装を経て、無事オープンすることができました。前のお店のテイストは、私がこういうお店にしたいという雰囲気と合致していたので、残せるところは残しました。それもあってお店のリニューアルと勘違いされたお客様も多くいらっしゃいました。勘違い(?)されたお客様のおかげもあって、オープンから客入りは上々で最高の門出を迎えることができたのです。
それから間もなくして最初の異変は起こりました。若い女性のお客様に、カットの仕上がりを確認いただくため、例の三面鏡でご覧いただいたときのことです。
「きゃっ!」
三面鏡を眺めていたお客様が小さく悲鳴をあげたのです。私は虫でもいたのかと思いお客様にお声がけしました。
「どうかされましたか?」
その問いに、お客様は「なんでもない」と返答したあと、少し戸惑った様子ながらも再度仕上がりを確認して納得されていました。
お会計のときにはすっかり満足された感じで、次の予約をしてからお帰りになりました。
次の異変はそれから数日後のことです。閉店後にスタッフのスカちゃんのカラーの施術のあとでした。スカちゃんは私が以前勤めていたお店の後輩で、私が独立することをしった彼女は一緒に仕事がしたいとついてきてくれた子です。まだまだ腕は未熟なところがありますが、センスもあるし何より明るく素直な性格で、姉妹のいない私には妹みたいな存在です。
本当の名前はマリちゃんといいますが、スカちゃんというあだ名は学生時代にスカジャンでのやらかしが由来していて・・・(笑)
凄く笑える話ですがそれはまた別の機会として、彼女が新作のカラーを試してくれたときにそれは起こりました。
「思ったより明るい色になるね」
「このメーカーのナンバーにしてはトーン明るめですよね」
「そうだね~。スカちゃん的にはどう?似合ってると思うけど」
正面の鏡だけでなく、三面鏡で全体の色合いなどを確認してもらおうと広げたときでした。
「暖色のライトの下だと色合いが凄く素敵ですよこれ~。私、気に入りました!・・・ぎゃっ!!」
スカちゃんが急に悲鳴をあげて顔を背けました。
「スカちゃん?どうかした?」
「由紀さん!鏡!鏡!」
スカちゃんは顔を伏せたまま、三面鏡を指さしました。
「鏡がどうかした?」
三面鏡を覗き込みますが、私以外映っていません。スカちゃんは恐る恐る顔を上げると私に言いました。
「鏡に映った自分が変な・・・」
聞けばスカちゃんが色合いを確認していたところ、三面鏡の右側に映った自分が変だったというのです。色合いを確認していた自分の動きと別の動きを見せたそうで、こちらを凝視したまま動かなくなり、無表情でこちらを凝視していたそうです。
「スカちゃん、私のこと怖がらせようとしていない?私、そういうの苦手なの知ってるでしょ?」
「由紀さん!冗談でも何でもないです!本当なんです!信じてください!」
冗談めかした一言に、スカちゃんは今にも泣き出しそうな勢いで反論していました。そのあまりの真剣さに、スカちゃんの言葉を半信半疑ながら受け入れざるを得ませんでした。
それからもその三面鏡を使用すると、お客様が妙な顔をされたり、ときには声をあげられりという出来事が頻発しました。この三面鏡には何かある・・・そう思い始めた頃に私も不可思議な出来事に遭遇したのです。
なんでそんなヤバい物を粗大ゴミ扱いするねん…
普通はお寺に預けるやろ!
意外とお寺というのはハードルが高いものですよ。お金もかかると思うと尚更です。
鏡は拾ったりもらったりするのは縁起悪いって昔から言われてるらしいかね
さ
三面鏡は合わせ鏡になるし怖いイメージがある
鏡は異世界に通じてるらしいよ
たくさんの投票ありがとうございました。
投票してくれた方々に感謝です。
とくのしん
最後の利き手が変わるところは意味深
鏡の中のスカちゃんと本物のスカちゃんが入れ替わったため、利き手が逆になった。
これは鏡の前で右腕を挙げると鏡では左腕を上げているように見えるのと同じ。
鏡って玄関に置くもので一番だめらしいよ