今、蘇る霊

いやいや、それはあまりに飛躍しすぎだろと思ったが、俺は口にはしなかった

うちには子供がいない
数年前、妻が身ごもったが流産してしまったのだ

その時は妻はとんでもなく落ち込んでしまい、生まれるはずの子供はきっと私のことを恨んでいる、化けてでてくるとふさぎ込んでいた

こういう反応になるのは無理もない

俺は何も言わず、大丈夫だと言い続けるしかなかった

それからまた何日かして、ある日、荷物が届いた
妻が取りにいって、それから少しして叫び声が上がった

何事かと彼女の元にいくと、そこには震える彼女と荷物の箱と、そしてベビーチェアがあった

聞くと妻の職場の上司から送られてきたのだという

その上司のことは俺も知っている
かなり気前のいいおじさんだ
直接会ったことはないが、何度か電話で話をしている

洋服会社の社長さんと知り合いで沢山の男ものの服を貰って余っているから、誰かいりそうな人知らないかと言われた妻が俺を紹介したんだ

それから何度かこういう服があるんだがいらないかと連絡がある

確かどこかで子供はいないと話したはずだ

それなのに何故？

彼女はその場でその上司に電話し始めた

「あっ。す・・すみません。あの、ベビーチェアが届いたんですけど・・・」

「ああ。届いたか。遠慮なく使ってくれ」

電話越しに上司の声が聞こえる。明るい声だ

「え・・いや、その・・・」

妻はなかなか、どうしてこんなものを送ったのか聞けずにいるようだった

「大きさは大丈夫かな？　ぴったり合っているはずだが。しかし、君も人が悪い。子供が出来たなら言ってくれればいいのに。君がお子さんと一緒にいるのを私が見かけなかったら、ずっと知らないままだったよ」

俺は絶句した

お子さんと一緒にいた？