いちにち、いちみり
投稿者:太山みせる (35)
止められなくても、やり過ぎになる前には必ず抑えてくれた
そのお陰で大怪我をしたり、自殺をする程に追い詰められた者は、少なくとも中学校ではいない
優しくて誠実な吉見が、色坂の側にいるのが不思議だった
後々聞いた話によると2人は幼馴染で、吉見の母親が色坂家の家政婦をしているということだった
だから吉見は頭が上がらないのかな、と野村は思った
とにかくあの2年間は毎日が戦争だった
何を仕掛けてくるか分からない敵がいる、しかも狡猾で厄介だ
自分の友達にまで危害が及ぶと嫌なので、野村は自ら孤立した
なるべく誰とも話さなかった
昼食も1人で取った
周りも野村の巻き込みたくない気持ちを理解し、巻き込まれたくもなかったので、誰も彼には近寄らなくなった
そんな中、吉見だけは誰もいない時限定だが、話しかけてくれた
「ごめんな」
いつも謝っていた
色坂の仲間になれば、こういった目に遭わなくなるだろうが、野村は絶対に嫌だった
色坂のすべてが気に入らず、そんな奴の配下には絶対になりたくなかった
結果、修学旅行も1人で巡ることになり、これはかなり辛かった
※
吉見について行き、人気のない路地裏にある小さな店に入った
店員とは馴染みのようで、すぐに個室に通してくれた
「来てくれて有難うな、さっきはビックリしたよ。まさか野村にこんな所で会えるなんて思わなかった」
強面な吉見が、心底嬉しそうな顔をした
「……こっちも驚いたよ。25年ぶりだな」
「家族と楽しく過ごしてる時に声かけてごめんな。どうしても話したいことがあって……」
「うん」
吉見が話したいこと、それはきっと色坂のことだろう
色坂は現在、指名手配犯だ!
「色坂を覚えているか?」
「忘れる訳がないだろう。子供の頃から最低で、現在は犯罪者だ。卒業生で1番有名だろうな」
「……中学時代は悪かったな」
「お前のせいではないさ。お前は色々庇ってくれたし、感謝している」
野村の言葉に、吉見は黙って頭を下げた
そして中学を卒業してからの話をしてきた
それによると2人は別の高校に行ったが、吉見の母親は住み込みの家政婦だったことから、色坂との交流は続いたという
吉見は高校を卒業して働き、色坂は一流大学を出て一流企業に入った
だが色坂の悪い性格は変わっていなかったらしく、問題を起こして会社をクビになった
学生までは許されても、社会人になったら許されないことはたくさんあるのだ
ひきこまれた。
引き込まれました。
10ページもあったかと思うほどあっという間に読んでしまいました!怖かったです!
面白かった。展開がハラハラする。
すごかった。
投票はしましたが怖かったより面白かった、「せめて1m〜」のくだりで不覚にも笑っちゃいました。
吉見さんに幸あれ!