電話を切った後安河内はホッと一息つく。
時計を見ると時刻は既に午後8時を過ぎようとしていた。
事務机に座る彼は飲みかけのコーヒーを飲みながら考えた。
─あの日平田さんのいる部屋に入った時、室内のあちこちに書かれていた文字は確か、、、
「みなこ」「ゆるす」「あいしてた」だったな。
さらにあの時平田さんは押し入れの中で包丁を携え異様に怯えているように見えた。
もし奥さんをまだ愛していてしかも許したというのなら、なぜあんなに包丁を持ってまで怯えていたんだ?
しかもあの時RinRinさんはあの部屋で女の人を見たと言っていた。
…………
もしかしたら平田さんの奥さんはもう、、、
だとしたら死体は?、、、
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─カチリ、、、カチリ、、、カチリ、、、
誰もいない事務所の柱にある時計の秒針の音がやけに響いている。
安河内のコーヒーカップを持つ右手が、いつの間にか小刻みに震えていた。
【了】
【了】
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生きている人間が怖い。
おっしゃる通りですね
─ねこじろう