【微睡みの泉】というサイト
投稿者:ねこじろう (147)
「マジかよ、そのサイト何というんだよ?」
そう言ってSは必死な様子でN美の顔を見た。
彼女は携帯を出してしばらく操作した後「サイトのURLをラインしといたから」と言うと立ち上がった。
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午後からSはコンビニのバイトに行き、その後自宅アパートに帰る。
シャワーを浴びると夕食をししばらくソファーでゲームをした後、ゴロリと横になると改めて携帯を眼前にかざす。
そしてN美が言っていたYouTubeの動画サイトを開いてみた。
真っ黒く塗りつぶされた画面が現れたかと思うと、「微睡みの泉」という白抜きのタイトルが浮き上がるように表示される。
すると画面は切り替わり、殺風景な四角い灰色の部屋が映し出され中央にはポツンとアンティークな広い机。
そこに真っ白い無表情な仮面をした女が黒いサリーを纏って座っている。
「今晩も癒しの映像・音楽そして私のマントラで、微睡みの泉にどっぷりとお浸かりください」
女の抑揚のない言葉の後再び画面は暗転すると一転し、今度は山々や海そして煌びやかな都会の様子などを上空から空撮した吸い込まれるような美しい映像が始まった。
BGMはシンセによる優しい癒しの調べ。
その調べに何か呪文のようなぶつぶつ呟くような言葉が重なっていく。
呟いているのはどうやらさきほど画面に現れた女のようだ。
言葉は低く抑揚がなく、ほとんど聞き取ることが出来ない。
深遠な般若心境のようにただひたすら無限に連なっていく。
それで反って脳ミソは混乱させられ、ソファーに横たわるSはいつの間にかうとうとしだしていた。
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翌朝Sは久しぶりにスッキリとした気分で目覚めることが出来た。
悩まされていたずっしりとした砂袋を背負ったかのような倦怠感は、嘘のようにきれいさっぱり消え果てている。
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