売れない人形
投稿者:八尺マン (46)
「何も知らないよ。このお店を開店させてから数日経った頃にあの人形が現れた。あの場所にまるで商品かのように置かれていた。最初は誰かのイタズラだと思った。当然、どかしたよ。だが、次の日になるといつの間にか同じ場所に戻っているんだ。何度やっても駄目だった。どこかに捨てても、土に埋めても、バラバラに刻んでしまっても燃やしてしまっても。次の日にはあの場所に戻っている」
バラバラに刻んでも燃やしても・・
そこまでしても戻ってくるなんて
とんでもない人形だ
「ある日、この人形を買いたいというお客さんが現れた。最初は断ったよ。当然だ。お客さんにこんなけったいなもの買わせるわけにはいかない。 けれど、お客さんはどうしても買いたいって聞かないんだ。いくら断っても、何故売ってくれない、なら何で置いてあるんだ、いいから買わせろってね。私は仕方なくその人に人形を売ったんだ 」
店主さんがため息を吐いた
「だが、ある日、店奥を見てみるとまたあの人形が戻ってきているんだ。その人形を買ったお客さんとは面識があったから連絡してみたが、まったく返事がなくて音信不通になってしまった。人形のせいなのは明らかだった。私はどうにかこの人形をどこかにしまおうとしたが、駄目だった。お寺に預かってくれと頼んだことがある。でも、やはり無駄。すぐにあの場所に戻ってくる」
店主は俯いた
「そして、また別の客があの人形を買おうとしてくる。また何かあってはいけない。私は必死になって買うのをやめるように言った。だが、皆、何が何でも買おうとしてくる。店内で暴れ出す人もいた。仕方なく売って、しばらくしたらまた戻ってきて、買った人の行方がわからなくなる。その繰り返しだ。ある時、説得したら諦めてくれた人もいた。これで大丈夫と思ったら、一週間後にそのお客さんが交通事故で死んだ。駄目なんだ。買ってもらっても買うの諦めてもらっても逃れられない。あの人形に狙われたら。どうやらあの人形はほとんどの人には見えないらしい。見えてしまっている時点で狙いをつけられているといっていい。唯一助かる方法は異常に自分で気付けること。君みたいに途中で気付いて解放される。それしかない」
どうやら俺はこれでもマシな方みたいだ
酷い奴は自分で身体を切りまくって・・
「何も言わずにその人形を渡してしまって悪いと思っている。だが、真相を明かした場合で助かったことは一度もないんだ。だから何も言えなかった。すまない」
とても信じられない話だった
だが、信じるしかなかった
あの膨張した人形を見てしまったら・・・
「あの人形は・・いったい何なんです?」
「わからない。私も色々と調べてみた。この場所が何か曰くつきの場所なのかとかね。だが、特にそういった話はなかった。前はここは飲食店でその前は一軒家だったらしいが、特にそこで事件があったとかそういう話は出てこなかった。私がグッズショップを開いたら現れたんだ。私自身の家系に何かあるのかも調べた。だが、やはり何もない。私も私の両親も、祖父母もこれまでそんなオカルトみたいなことは経験してない。いきなりなんだ」
店主さんの声が震え出した
「私は何もしてない。本当だ。何も悪いことはしてない。いきなりなんだ。突然なんだ。なんで・・・なんでこんなことに」
店主さんから嗚咽のような声が漏れた
「・・・だが、もうこれ以上被害を増やしちゃいけないな。私はこの店を畳むよ。そうすれば人形が商品として並ぶことはなくなる」
それはおそらく効果的な方法だろう
どれだけ戻ってくる能力があっても場所そのものがなくなれば意味がない
しかし・・
「でも、そうしたら店主さんが危ないんじゃ・・。人形にしてみれば居場所を奪われることになる」
「ああ。殺されるかもしれないな。私だけ何もされてこなかったのは居場所を守るためだろうからな。その居場所をなくそうとしたらどうなるか。
だが、もう覚悟を決めたよ」
店主さんの声にもう震えはなかった。あの人形をまっすぐ見つめていた
怖かったです((T_T))
( ゚д゚)
怖すぎる!
チャッキーみたいやな
それが魔物でも生きた人間でも勝手に気に入られて勝手に付き纏われ最後は命まで奪われるなんて理不尽で怖過ぎる。