【あの頃の怪談①】1999年
投稿者:綿貫 一 (31)
かく言う俺も、小学校の頃、学研の『世界の超能力者辞典』という本で初めて「ノストラダムスの大予言」の存在を知った時、「まだずっと先のことだけど、自分が生きているうちに起きるかもしれないんだ……」と怖くなったし、
もう少し成長した中学生の頃には、「あと5、6年――俺が高校生の時か。何も起きないとは思うけど、本当に世界が滅亡したら嫌だな。高校生とか『人生これから』って時じゃん。それまでにカノジョとかできるだろうか……」などと、本気で心配したりしたもんだ。
閑話休題。
※
※
さて、予言の真偽は言うまでもないな。
結局、件(くだん)の7月を越えても、当たり前の日常は、今もこうして続いているわけだから。
たださ、俺はたまに思うんだ。
「ノストラダムスの大予言は、本当に外れたのかな?」って。
※
あの7月の、いつだったかの深夜。
とんでもなく激しい揺れを感じた気がして、俺は意識を覚醒させた。
「巨大地震がきた!」
そう直感的に感じた俺は、布団の中で思わず身体を固くしたが、数瞬ののち、辺りが静まりかえっていることに気付いて、深いため息をついた。
「夢だったのか……」
そう思い直して、再び微睡みの中へ落ちた。
翌朝、念のため親に尋ねてみたが「夜中に地震なんかなかった」と言われた。テレビや新聞でも、そんなニュースは報じられなかった。
やはり俺の勘違い。
それで、この話は終わりになるはずだった。
でも、その日を境に、俺の中で何かが「ズレて」しまったんだ。
いつもと同じ、家族、友人、住み慣れた町の景色。
だけど。なのに。何かが違う――気がする。
どこがどうとは言えないけれど、何かが微妙に以前と違う。
違和感がある――とでもいうのかな? うまく言葉にできなくて、もどかしいんだが。
だがその「ズレ」は俺に、船酔いのような、時差ボケのような、気持ちの悪い感覚を植え付けた。
そして、その嫌な感覚は、それ以来ずっと――今に至るまで続いている。
※
突然だが、「世界線」って言葉を知ってるかい?
アニメ化もされた某名作ゲームに出てくる言葉で、有名なミュージシャンの歌の歌詞にも出てくるんだが。
知らないって奴のために説明すると、まあ「パラレルワールド」って意味に近いかな?
ある出来事を起点に、「世界線」が「分岐する」んだ。
綿貫です。
それでは、こんな噺を。