拝啓 土の下より
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2024/01/10
21:06
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――ジュクジュク、
――ピチャピチャ、
地面の土は柔らかく、子供の手でも簡単に掘り進められた。
一掻きごとに冷たい土の中から、木の葉と、昆虫と、微生物の腐った、いい匂いが漂ってきた。
茸の根は、地面の中で一層白く、底へと伸びていた。
それでも、それほど深くないところで、私の手は茸の根にたどり着いた。
そしてそこには、
『純くん――』
お姉ちゃんがいた。
………
………
………
その後、家に戻ってこのことを家族に告げると、小さな田舎町は騒然となった。
ただちに警察が森へと向かい、秘密のクヌギの前の地面の下から、お姉ちゃんの遺体を回収した。
おばちゃんは泣いていた。
私には知らされていなかったが、お姉ちゃんはその年の前年の冬、行方不明になっていたそうだ。
誘拐の疑いもあるということで、捜査も行われていた。しかし、一向に見つからなかった。
私は、何度も警察に事情を聞かれた。
小学2年の男子に容疑が向くことはなかったが、なぜあんな時間にあんな場所にいたのか、なぜ地面を掘り返す気になったのか、と再三問われた。
私は虫取りのこと、茸のことを正直に話し、大人たちも納得せざるを得なかった。
………
………
………
長じてから植物に興味を持った私が、ある書物を読んでいて知ったことだ。
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最後の余韻が怖かった
実話なのか、夏の田舎での早朝の森の様子が手に取るよに分かり怖さを倍増させていてあっぱれです。
ひきこまれました。
うむ🫤
場面の移り変わりや、時間帯や季節の描写が印象的。最後の2行は、主人公が既に闇落ちしていることを示唆しているのでしょうか。