ただそこにはやはり、奇妙な者が映りこんでいた。
その者はウインドウの外側におり、Sの肩に寄り添うにして立っていた。
その白くボンヤリした姿は間違いなく、あの展望台に映りこんでいたあの女だ。
Hの時と同じように青黒い顔をSへと向け、恐ろしい形相で睨んでいる。
驚愕の表情で写真を見るK氏の顔を見ながら、Sが続ける。
「私の肩越しに見えるその女。
明らかにウインドウの外に立っています。
その会場はビルの10階にあるわけですから、あり得ないんです。
そしてこの写真を撮った日の翌日辺りから、たまに耳元で囁くような低くくぐもった女の声が聞こえるんです。
朝も昼も夜寝てからまでも」
「何と聞こえるんですか?」
「絶対に許さない、、、
絶対に許さない、、、
絶対に許さない、、、
絶対に許さない、、、
、、、
何度も何度も」
繰り返しながらSはそのまま俯くと、両耳を塞ぎ卓に突伏した。
そして肩を震わせなからK氏に訴える。
「先生、お願いします、助けてください。
私、まだ死にたくないんです」
K氏は目を瞑り腕組みしたまましばらく考え続けていたが、やがて目を開くと、
「Sさん、あなたの不安なお気持ちよく分かります。
でもここまで強い負の思念を抱いた霊には、私も今まで出会ったことがないんです。
だから本当にお気の毒なんですが、、、」
と言って、おずおずと携帯をSに返す。
それからは、
Sの悲痛なすすり泣きだけが、部屋内を響き渡っていた。
【了】
























kanaです(旧姓kama)
ねこじろう様、100話おめでとうございます。
kana様
ありがとうございます。
そうでしたね、もうそんなになるのですね。
100物語ならば100話めに怪異が起こると言われてますが、何か恐ろしいことが起こるかも知れませんね(笑)
これこそ奇奇怪々です。
投稿者様100話おめでとうございます。次回作も楽しみです。
ありがとうございます。
─ねこじろう
Fと同じようにってHのことですか?
おっと、いけない!
記載ミスのようです。
ご指摘のとおりHです。
ありがとうございます。
─ねこじろう