田舎のこんびにえんすすとあ
投稿者:ねこじろう (147)
介護用品を取り扱う会社の営業をしている29歳のわたしはその日の午後、県北部の山の中腹にあるとある一軒家に向かう。
前日そこに住む老夫婦からの連絡で、弊社介護用ベッドの説明を聞きたいということだったからだ。
あいにくその日は営業車に空きがなくて市中心部にある会社事務所から電車バスと乗り継ぎ、その一軒家のある小さな部落に向かった。
そして県道から分け行ったそこにようやく着いた時には、もう随分日差しは弱くなってきていた。
古びた日本家屋の奥まったところにある仏間に通された私は室中央に置かれた座卓に正座し、そこに住む老夫婦を前にして介護用品の説明を始める。
そしてあらかた説明も終わり、さてそろそろお暇しようかと身支度を整えだした時だった。
「まあせっかくこんな遠いところまで来られたのだから、もう少しゆっくりされたら」というご主人の言葉に甘えてから、私は出されたお茶を啜りながら四方山話に花を咲かせていた。
それからある程度話に区切りがついた辺りでふと時計に視線をやった途端、私は目を剥く。
━え、もう9時過ぎ!?
確か帰りのバスの最終は9時5分だったような、、、
私は挨拶もそこそこに立ち上がると、いそいそと訪問先をあとにした。
※※※※※※※※※※
それから部落を小走りで抜けてから山道まで行き着くと、息を切らしながらバス停にたどり着く。
━ええっと、○○駅行きの最終は、、、
携帯ライトをかざしながら時刻表に目を凝らしたが、やはり最終バスの時間は午後9時5分だった。
既に5分過ぎている。
しょうがないからタクシーでも呼ぼうと携帯を見たが、なんと圏外の表示がでていた。
━この辺りって、そんなに山奥なの?
などと途方に暮れ立ち尽くしていたが、こんなところにずっといれるわけもなく、私はとりあえず会社の方角へと歩きだした。
左手に伸びている片側一車線の道路は閑散としていて、走る車の気配がない。
それから右手に鬱蒼とした山林の広がる暗い山道を街灯を頼りにしながら、どれくらい歩いた頃だろうか?
いや、お祓いに行く前に金を払いに行けよ(笑)
マネキンの手に150円握らせろ
確かに(笑)
━ねこじろう