くらやみ様
投稿者:綿貫 一 (31)
目を泣き腫らしています。
聞けば、突然僕の姿が消えたのだ、というのです。
そして、長い時間、彼女は一人でこの白い部屋にいた、というのです。
木製のドアの向こうには黒いモヤモヤが溢れてきているはずで、怖くて覗けなかった、というのです。
これは夢だという認識がありました。
そして、昨日の夢の続きのようになっていることに、不思議な感じを覚えました。
しかしその疑問も、淋しかった怖かったと僕の手を握る彼女の姿に、すぐにどうでもよくなってしまいました。
僕は彼女と色々な話をしました。
趣味の話、ペットの話、部活の話、テレビの話。
それまでの淋しさを紛らわすように、彼女はよくしゃべりました。
僕も、どうせ夢だという認識から、気負いなく、普段よりも元気に話すことができました。
僕が勝手に見ている夢ではあるのですが、どんどん彼女のことを理解していくことができているような気がして、とても満足でした。
彼女も僕のことを、話してみるととても面白い人ね、と言ってくれました。
満足感と恍惚感で、僕の視界は真っ白に染まっていきました。
……
……
……
翌日も、彼女は学校を休みました。
その翌日も、翌々日も。
聞けば、彼女は病気で入院をしているというのです。
噂では、ずっと目を覚まさないのだというのです。
それで僕は分かりました。
彼女の中身は今、僕の夢の中に閉じ込められているのだと。
あのオマジナイは、好きな子の夢を見る、というものではなく、
夢と夢とをつなげるものだったのだと。
それに気づいて、僕は興奮しました。
状況だけ見れば、僕は彼女を監禁しているようなものです。
現実でそんなことをすれば犯罪ですが、夢の中のことなので罪にも問われません。
彼女はただ、病気で目が覚めないだけ。
オマジナイのせいだなんて、誰も気が付きません。
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